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“中国が嫌だ”という感情が韓国で一気に広がった納得の理由「いまは親日より、親中だと思われたらアウトですよ」

“中国が嫌だ”という感情が韓国で一気に広がった納得の理由「いまは親日より、親中だと思われたらアウトですよ」

2023/09/09
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 さらに韓国で反中感情が広がった背景には、社会的な雰囲気もあっただろう。THAAD配備の翌月に就任した文在寅前大統領は、悲願の北朝鮮との関係改善のために中国との関係改善に力を入れた。そのため中国から突きつけられた「追加のTHAADを配備しない」などの3つの条件を呑み、韓国が得るもののない「3無」と非難を浴びた。

 また、韓中首脳会談では文大統領(当時)が「ひとり飯」の屈辱的な扱いを受けたと大々的に報じられたこともある。保守系の新聞記者は、「中国に対して弱腰な韓国政府の態度も、積もり積もって反中につながったのかもしれません」と分析する。

 2022年5月に誕生した尹錫悦政権では、大統領直属の情報機関である国家情報院の中で対中国チームが拡大したといわれ、中国に対する警戒感が窺える。さらに最近は、中国語や中国文化を広げる「孔子学院」や中国の「秘密警察」にも厳しい目が向けられている。

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尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と金建希(キムゴンヒ)夫人

 そんな中、中国は8月10日に「限韓令」の一部を解除して、6年ぶりに団体旅行客の渡韓を認めた。メディアには「中国人団体客 免税ショッピングへ 国内免税店に活気」(聯合ニュース、2023年8月27日)、「帰ってきた中国人観光客 仁川に3年間で4万人がやってく…限韓令以来最大」(朝鮮Biz、同8月29日)などの見出しがおどったが、手放しで喜んでいる雰囲気は感じられない。

「どこまで行っても“小国”扱いなんですよ」

「日本と韓国を『アメリカと中国のどちらに付くのか』と試しているのだと思います。韓米日が結束を強めることは中国にとっては厄介。アメリカに面と向かって喧嘩を売ることはできないので、今は日本を原発問題で叩き、韓国には飴を差し出して懐柔しようとしているのでしょう。どこまで行っても“小国”扱いなんですよ」(前出・保守系新聞記者)

 韓国が中国に対して強気に出られるようになってきた背景には、貿易相手国としての中国の比重が下がってきた事実もある。今年1~7月の輸出内訳をみると1位の中国(19.6%)と2位のアメリカ(18%)はわずか1.6ポイント差で、中国経済の停滞も伝えられている。最近では、「安保も経済もアメリカとともに」と書くメディアさえ現れている。

「反日」の時のようなデモによる抗議や声明は今のところ少なく、「反中」の具体的なアクションは見えづらい。もやもやと広がっているだけだ。ただ韓国は、政治と安保面では確実に「アメリカや日本とともに中国と対峙する」方向へ傾いている。

“中国が嫌だ”という感情が韓国で一気に広がった納得の理由「いまは親日より、親中だと思われたらアウトですよ」

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