その「恐中症」が「反中感情」に転じる大きなきっかけは、2017年4月の米THAAD(高高度防衛ミサイル)配備といわれている。北朝鮮のミサイルから国を守るために韓国に配備された米THAADに、中国はミサイル軍の動きが監視されるとして猛反発していた。
実際にTHAADが配備されると、中国政府は駐韓米軍に土地を提供した財閥のロッテグループに対して、法令違反を理由に中国での営業を停止させた。さらに市民の韓国製品不買運動を煽り、中国にあったロッテマートを撤退に追い込んでいる。
さらに報復として中国人の団体観光客の渡韓を禁止し、K-POPなどのエンタメ公演やファンミーティングも禁止した。韓国製ゲームの輸入も禁止された。これらの一連の報復措置は「限韓令」と呼ばれている。
「現在の韓国が小国扱いされるいわれはありません」
当初は慌てふためいた韓国だが、中国外相が言い放った「小国(韓国)が大国(中国)に楯突いてもよいのか」という発言が報じられると雰囲気が一変した。
「限韓令の中身以上に、中国外相のこの言葉が韓国人の感情を揺さぶりました。たしかに韓国には中国の属国だった時代がありますが、それも昔のこと。産業も文化もグローバルに大きく発展した現在の韓国が小国扱いされるいわれはありません」(前出・中道系新聞の記者)
前出の『時事in』によると、韓国内の「反中感情」は広がっているが、中でも嫌悪感が強いのが20代の若者だという。2020年にアメリカの「ピュー研究所」が行った意識調査でも、他の国では高齢者の「反中感情」が強い傾向があったが、韓国だけ唯一Z世代の「反中気分」が際立っていたのだ。
韓国の20代がもっとも強く拒絶している対象は中国共産党(81.1%)だ。
実際に20代の若者たちに話を聞くと、「コロナ禍での中国政府の対応をみると、国民を刑務所に閉じ込めているような印象を受けました。人権を重んじない国なんだなあと思いました」「コロナも中国政府が最初に処置を適切に行っていれば広がり方も違ったのではないかと思ってしまう。米国で起きているアジアン・ヘイトも中国が原因だと思う」などの声が聞かれた。
民主化後の韓国で育った若い世代にとっては特に、中国政府の強権的な対応への違和感が強いようだ。