夫の死の真相を求めて雅子さんが起こした2つの裁判は、奇しくも2日連続して大きな山場を迎え、2日続けて期待は裏切られた。
佐川氏は説明をすることなく…
始まりは6年前。財務省近畿財務局が大阪の森友学園に、鑑定価格9億5600万円の国有地を約8億円も値引きして1億3400万円で売り払っていたことが、木村真豊中市議らの追及をきっかけに2017年2月発覚した。財務省は「土地に埋まっているごみの撤去費用だ」と説明したが、巨額な値引き額の根拠を示すことができず、国会で紛糾。問題の土地に設立される小学校の名誉校長に、時の安倍首相の妻、昭恵さんが就任していたことから「首相への忖度があったのではないか」と追及された。
取引を巡る交渉記録の提出を求める野党に対し、担当局長だった佐川氏は答弁で「記録はございません」と突っぱねる。その佐川氏に安倍首相から「もっと強気で行け」というメモが秘書官を通し渡されていたことも「文藝春秋」で報じられた。そしてその陰で、佐川氏の主導の元、関連する決裁文書などの不正な書き換え=公文書改ざんが行われていたことが1年後に発覚する。佐川氏は国税庁長官に栄進していたが、責任を問われ事実上更迭された。しかし当時も今も何も公に説明していない。
この公文書改ざんを上司に命じられたのが赤木俊夫さんだ。問題の土地取引は俊夫さんが職場に着任する前のことで、何ら関わっていなかった。俊夫さんは本省に抗議のメールを送るなど改ざんに反対したが受け入れられず、結局改ざんをさせられることになる。俊夫さんはこのことを悔やんで心を病み、改ざん発覚1年後の2018年3月7日、自ら命を絶った。亡くなる直前、俊夫さんが遺した「手記」には、改ざんについて佐川氏ら財務官僚を告発する内容が書かれていた。