現役時代、栗山英樹監督が率いた日本ハムで、ダルビッシュ有、大谷翔平とバッテリーを組んだ経験を持つ元プロ野球選手の鶴岡慎也氏。侍ジャパンが世界一に輝いた2023WBCでは、ブルペン捕手としてチームに帯同した。
ここでは、ブルペンから見たWBC優勝の裏側や、栗山監督、ダルビッシュ投手、大谷選手などの素顔を綴った鶴岡氏の著書『超一流の思考法 侍ジャパンはなぜ世界一になれたのか?』(SB新書)より一部を抜粋。侍ジャパンの練習中、大谷選手のスゴすぎる打撃に対して、ほかの選手たちはどのような反応を見せていたのだろうか? (全2回の2回目/1回目から続く)
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打撃練習は、日本選手への「メッセージ」
WBCの壮行・強化試合である3月4日の中日戦(バンテリンドーム ナゴヤ)、3月6日の阪神戦(京セラドーム大阪)で、大谷選手が打撃練習をしました。打球は広い両球場の上段に大きな弧を描いて突き刺さりました。
私は外野で打撃練習の球拾いをしながらその光景を見ていました。ふつう、このぐらいの角度で打球が上がれば、外野のこのあたりに落ちてくるというのは肌感覚で分かるものです。しかし、大谷選手の打球は落下するどころか、打球速度が落ちず、スタンド上段まで届いてしまうのです。
大谷選手と他選手の差を表現するなら、「プロの1軍と2軍ほど違う」と言うよりも、「プロ野球選手と高校球児ほど違う」の表現が妥当でしょうか。中日や阪神の若手選手は、あたかも花火大会でも見るように、打球が打ち上げられるたびに喜び、また驚愕の表情をしていました。スマートフォンで動画撮影をする選手も多かったです。
ファンサービスという側面もあったのでしょうが、岡本選手や村上選手ら日本球界の次代を担う選手に見せる意図もあったのかもしれません。2人のホームラン打者は、打撃ケージに貼り付いて見入っていました。私は大谷選手のメッセージだと思っています。