現役時代、栗山英樹監督が率いた日本ハムで、ダルビッシュ有、大谷翔平とバッテリーを組んだ経験を持つ元プロ野球選手の鶴岡慎也氏。侍ジャパンが世界一に輝いた2023WBCでは、ブルペン捕手としてチームに帯同した。

 ここでは、ブルペンから見たWBC優勝の裏側や、栗山監督、ダルビッシュ投手、大谷選手などの素顔を綴った鶴岡氏の著書『超一流の思考法 侍ジャパンはなぜ世界一になれたのか?』(SB新書)より一部を抜粋。鶴岡氏と10年ぶりの再会を果たした大谷選手が、大先輩に対して見せた“超一流の品格”とは?(全2回の1回目/2回目に続く)

大谷翔平選手 ©文藝春秋

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初対面での挨拶に感じた品格

「直接メジャー行きか」「投打二刀流を本当にやるのか」など、大谷翔平選手は大きく騒がれての入団だったので、私もそれなりに気を遣いました。

 ただ、大谷選手の父・徹さんが、私と同じ三菱重工横浜の野球部、母・加代子さんはバドミントン部の出身だったのです。徹さんの在籍期間は私と重なっていません。 

 でも、大谷選手はそのことを知っていて、挨拶に来てくれました。

「はじめまして。ウチの父が鶴岡さんと同じ社会人野球チーム出身です。以後、よろしくお願いします」

「ああ、知っているよ。よろしくね」

 初対面での挨拶といい話し方といい、いい躾をされて育ってきたんだな、品格があるなということを感じました。

 注目を集めた高校時代からインタビュー慣れしている影響もあったのでしょう。しっかりと考えながら、丁寧な言葉遣いでハキハキと話す子だなというのが第一印象でした。

大谷のことを悪く言う人は皆無

 さて、今回のWBCで再会するとき、実は私には大きな悩みがありました。 

 私が日本ハムに復帰した2018年、入れ違いで大谷選手は海を渡りました。あちらは今や世界一有名な野球選手と言っても過言ではありません。テレビ画面の向こうの別の世界の人なのです。(10年前のように「翔平」って、先輩面して軽々しく呼び捨てにしていいものかな……)