「今季のオリックスで特に印象に残っているのはどの試合ですか?」

 度々いろんな人から聞かれます。

 私はその度に、「うーん」と考えこんで結局ひとつに決めきれず、ただ話が長いだけのオバチャンになってしまいます。それほど印象に残る試合が多すぎて……。

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 今季はサヨナラ勝ちのゲームもたくさんあったし、ほっともっとフィールド神戸での、あの大興奮。あ、オリっこデーでカタカナユニを着た選手達が歓喜に沸いたあの試合も……。

 リーグ優勝を決めた9月20日(水)の試合の直後はしばらく興奮さめやらず、もうこの試合しかない!と思いながら、優勝した後のいわゆる「消化試合」に突入。去年も一昨年もギリギリで優勝を決めてますので、ファン6年目の私にとって初めての経験です。

 もちろんチームの勝利は願うけれど、少し気楽な気持ちで見られるのかな、と少し思ってしまっていた私が浅はかでした。なんというハラハラドキドキの日々!

頓宮のタイトルがルーキーの投球に委ねられたあの試合

 その中で個人的には、9月30日(試合は負けてしまいましたが)、特に期待を寄せている横山楓投手がプロ初登板を果たせたこともとても嬉しかったです。昨年ファームの試合でギュイーンと迫ってくるような力強いストレートに一瞬で心を掴まれ、今か今かと待っていました。8月22日初めて一軍に上がるも、登板機会なく翌日に抹消。あの時はガッカリしていましたが、あれは一軍のブルペンの雰囲気に馴染むために設けた1日だったのでしょうか。“上げたらすぐ使う”という印象が強い中嶋監督。でもそれ一辺倒ではなく、ああいう上げ下げもあるのか~すごっ! やっぱりすごっ!

 この先への準備もしっかりと盛り込みながら、ここぞという所ではしっかり決める。

 平野佳寿投手の日米通算250セーブ達成の大記録は10月2日見事ホームで達成!

“今シーズン中に、ホームで”というのも監督はちゃんと考えてらっしゃったでしょうし、そしてそのチャンスの時に一発で決める平野さんもさすがすぎます。本当におめでとうございます。

 そして、最終戦のホークス戦、最後にして最大とも言える山場を迎えるのです。

 けがで離脱してしまった頓宮裕真選手の打率が.307、そしてホークス近藤健介選手の打率が.303。ギリギリまでわからない首位打者争いの行方がチームに、ルーキーの投球に委ねられたあの試合です。

 事前のインタビューで中嶋監督は「(頓宮選手が)休んでしまったんだから、越えられたら仕方ない」というようなことをおっしゃっていたと思います。それも愛だなと思いながら、とは言え先発は山本由伸投手だろうとほとんどの人が思っていたところ、前日に発表された先発はなんとルーキーの曽谷龍平投手。

曽谷龍平 ©時事通信社

 前回の登板で悔しい思いをしてる姿を球場で見た時「来年またがんばろう! 期待してるから」と、勝手に私は思ってしまってましたが、中嶋監督はぜんぜん諦めてなかった。これが、選手を信じる、大切に育てるということなのか……。中嶋監督がこの試合、マウンドに彼を送り出すなら、今までもそうだったように、私も信じよう。曽谷投手の初勝利、頓宮選手の首位打者獲得、そしてチームの勝利を。そう思いながら京セラドームに向かいました。

 その時の私はまだ気がついていませんでしたが、すでに私達ファンは壮大な中嶋イリュージョンの真っ只中にいたのです。