「滝、お願いしますよ」

 10月26日のドラフト会議が迫ってきた。毎年秋になると、私は名古屋市守山区の倶利加羅不動寺で滝行をしている。中日ドラゴンズのドラフト成功祈願だ。2018年から始め、いきなり根尾昂を4球団、翌年は石川昂弥を3球団競合の末に獲得。滝行パワーの噂は球界に広がり、2020年には読売ジャイアンツ関係者が同じ滝に打たれたほどだ。

滝行をする筆者 ©CBC

 冒頭の声の主は中日前チーフスカウトの米村明シニアディレクター。その表情は例年以上に真剣だった。今年は競合覚悟か。2年連続最下位に沈んだ立浪竜にとって、再建の鍵を握るドラフト会議。運命の日を前に現時点の評価を聞いた。

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米村SDが語る2023年ドラフト候補

 米村氏から最初に出てきた名前は常廣羽也斗(投手・青山学院大)だった。

「社会人も含めて投手では頭一つ抜けています。ストレートの切れが良く、変化球の精度も高い。先発もリリーフもできます。1年目から先発なら森下(暢仁・広島)、リリーフなら栗林(良吏・広島)くらいの活躍が見込めます。5球団くらいの競合になるんじゃないですか」

 次に挙がったのは武内夏暉(投手・国学院大)と古謝樹(投手・桐蔭横浜大)のサウスポー2人だ。

「武内は毎回安定感があって、大きく崩れません。これはローテーション投手にとって大切なことです。打者の左右にストレートをきっちり投げ分けられるのが強み。細身ですが、体をうまく使って投げています。タイプ的には今中(慎二・元中日)ですが、今中は私のスカウト人生でナンバーワンなので、『今のところ、そこまでは』としておきましょう。武内も競合の可能性があります。

 古謝はパワーピッチャー。強いストレート、縦に落ちるスライダーで打者を圧倒します。ただ、投手には表と裏がありまして、裏にはまると、突如制球を乱します。タイプは浜口(遥大・DeNA)に近いですね」

 草加勝(投手・亜細亜大)、下村海翔(投手・青山学院大)が続いた。

「草加は角度が魅力。182cmですが、もっと大きく見えます。ストレートとフォークで空振りを取れる。大学時代の九里(亜蓮・広島)に似ていますね。下村はコントロールが抜群でテクニシャン。まず間違った所に投げません。イメージは良かった頃の野村(祐輔・広島)。今、常廣ではなく下村がリーグ戦で先発する試合もあります。近くで見ている監督がそう判断するということは信頼されている証拠です」

 西舘勇陽(投手・中央大)と西舘昂汰(投手・専修大)のダブル西舘も注目だ。

「中央の西舘は完封するスタミナがあって、誰がどう見てもいいピッチャーですが、意外と勝てていない。緊迫した投手戦の勝負所でやられてしまうのが裏の顔です。専修の西舘は先輩の黒田(博樹・元広島)のよう。力があって、球も速い。ただ、フォアボールも出す。育てるには首脳陣に我慢が必要でしょう」