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「一本釣りで行くとしたら」と名前を挙げた高校生投手とは?

 次の候補を聞こうとした瞬間、米村氏は「常廣、武内の他にも競合する可能性があります。今の7人で1巡目は終わっているかもしれませんよ」と制した。その上で「一本釣りで行くとしたら」と推した高校生がいる。

「木村(優人・投手・霞ヶ浦)です。スムーズなフォーム、スピンの効いた真っ直ぐ、とにかくスケールが大きい。将来のジャパン候補です。(高橋)宏斗が2年目に出てきて、3年目に侍入りして、規定投球回をクリアしましたが、同じような成長がイメージできます。タイプは150キロの真っ直ぐで押していた大学時代の菅野(智之・巨人)ですね」

 さらに前田悠伍(投手・大阪桐蔭)を挙げた。

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「春先に怪我があって夏は本調子ではありませんでした。大阪大会決勝も140キロそこそこで負けました。今、各球団の評価は分かれていますが、私はむしろ上がりました。あの試合は3対0でしたが、並みのピッチャーなら大量失点でKOですよ。そこを必死に技術と根性で3点に抑えたんです。絶対負けたくないという意地を見ました。これこそプロで最も重要なこと。私は彼のハートに惚れました。こんなピッチャー、今永(昇太・DeNA)以来です」

 野手はどうなのか。

「正直、やや不作です。うちは最下位だったので2位は真っ先に獲れますが、3位はかなり待ちます。これが戦略的に難しいところ。良い野手は3位までに消えている可能性があります」

 イチ押しは進藤勇也(捕手・上武大)だ。

「(筑陽学園)高校時代に九州担当の三瀬(幸司スカウト)が『いいキャッチャーがいるので見に来てください』と言うので行ったら、本当に良かった。でも、進学が決まっていました。上武は目の付け所がいいですよ。大学でも順調に伸びて、3年生からキャプテンです。試合中に『あ、流れが悪くなりそう』と我々が思った時は必ずマウンドに行っています。セカンド送球で2秒を切るとか、バッティングがどうとか、それ以上に大切なのはゲームを読む力です。『ここは歩かせてもいいのに』という場面で無茶なリードをしません。今のキャッチャー陣に不満があるなら、進藤に代えてもいいくらいです」

 横山聖哉(内野手・上田西)も欲しい選手だ。

「長打力があって、広角に打てて、肩が強い。ピッチャーをさせても150キロを投げます。将来的には坂本(勇人・巨人)になれる存在です。ただ、来年すぐにレギュラーではなく、2、3年はじっくり育てたいですね。横山が入ると、今の二遊間はみんな『こいつに抜かれるな』と焦るでしょう。競争を促す意味でも獲る価値は十分にあります」

 上田希由翔(内野手・明治大)は東京六大学での実績がある。

 「明治のキャプテンで打点を多く挙げています。少し粗さがあって、確率は高くない。ただ、2、3年かければ、バンテリンでも20発打てる能力があります。タイプとしては金本(知憲・元広島)ですかね。石川(昂弥)の守備が今のままなら、上田がサードで石川がファーストという未来もありでしょう」

 さらに下位指名候補選手の情報にグイグイ迫ると、「若狭さん、どこまで喋ればいいんですか」と笑った。「まぁまぁ、高校生のピッチャーにキャッチャー、地元選手、社会人のショート、あと独立リーグにも面白い素材がいますよ」とけむに巻いた。

 10月12日、立浪監督が同席してスカウト会議が行われた。米村氏は「結局、監督が来季をどう考えているかで指名は変わります。勝ちにいくのか、将来を見据えるのか。今年は監督の意向がより反映されるでしょう。ドラフト前日も会議をしますし、当日も話し合います。ギリギリまで分かりませんよ」と語った。

 指名は支配下が6人ほどで育成は3、4人か。もう滝行は済ませた。あとは天命を待つだけだ。

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