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「祐大は大丈夫ですよ。今年絶対活躍しますよ」

 ベイスターズに入団してからも、活躍していようがしてなかろうが、彼の本気は何一つ変わらない。私は引退してから、何度かチームスタッフの方とお話しする機会があったのだが、祐大が早くからグランドに来て練習している話を色んな人から聞いていた。後述するが、そんな事は序の口で、見えない努力というものを積み重ねての今なのだと、そう思わせてくれた。

 年々活躍の場を増やす彼の姿とは裏腹に、祐大パパは人知れず気を揉んでいた。「6年目の今年のキャンプ、初めて現地に行ったんです。もしかしてそろそろクビになるんちゃうかなー、やばいんちゃうかなーって思って、そうなる前に一回は行っておきたいなって思って」。しかし、そんな不安は現地で吹っ飛ばされた。

「『祐大は大丈夫ですよ。今年絶対活躍しますよ』って、いろんな先輩が言うてくれるんです。そんなこと言ってもらえるなんて、ほんまにええチームに入れてよかったなあって思いましたね」

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 ベイスターズの先輩方の言葉を聞けたことに加えて、野球に向き合う祐大の姿を見たことも大きかった。

「全体練習が終わってから、ホテルに帰るんかと思って待ってたら、そのまま室内練習場でずーっとバッティング練習してまして。ほんでやっとホテル帰ったかと思えば、桑さん(桑原選手)の部屋行くからって言われて。そこでバッティングのこと聞いとるんかマリオカートしとるんかは分かりませんけど(笑)。とにかく家族そっちのけで野球ばっかしてたんで、大丈夫かなって思えましたね!」

 ホテルに帰っても野球の練習。見えないところで如何に工夫するか。その積み重ねが、やがて大きな差になるのかもしれないと、祐大の活躍はそう思わせてくれるのであった。

「人間って、余裕がないとなかなか次に進めないじゃないですか」

 そして、親ならではの視点で今年の打撃面での活躍の理由も教えてくれた。

「両立が難しいんと違いますかね。今までは守備のことで精一杯やったと思うんですけど、自主トレで(阪神)梅野さんにお世話になったり、ベイスターズの先輩方にお世話になったりして、やっとそれなりになってきた気がします。そうなると、打撃に割ける時間とか気持ちの余裕とかが出てきて、それで打てるようにもなってきたんちゃうかなーって。人間って、余裕がないとなかなか次に進めないじゃないですか。守備面での多少の余裕のおかげで、打撃も上がったんかなーって」

 一通りの祐大に関することを聞き終えて、電話時間の半分ほどは当時の懐かしい話をさせていただいた。「寺田さんのこともいつもチェックしてますよ!」と、そんな話までしていただいた。

 祐大パパはしきりに「いいチームに入れてよかった」と話してくれた。大和さんが練習中にも関わらず、わざわざ写真を撮ってくれた話も聞かせてくれた。

山本家の家族写真(撮影:大和選手)

 お父さん、私もそう思います。いいチームに入れてよかったなと。たった2年ではありましたが、このチームで得た経験や繋がりは一生の宝物です。

 トライアウトの後に訪れた、祐大パパのお店『串焼GAO』。また行きますとお伝えすると、「いつでも遊びに来てください」と言ってくれた。お父さん、今度は一緒にお酒でも飲みながら、ベイスターズ戦を見ましょうね。

祐大パパのお店『串焼GAO』にて ©寺田光輝

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