優勝を願った開幕前

 今年の開幕前、神奈川新聞のイベントに石川雄洋と二人で呼ばれた私は今年のベイスターズの順位予想を「優勝」にした(ちなみに石川も優勝予想)。

 毎年毎年聞かれるが、正直私はいつも「横浜ファン」目線での順位予想だった。だが今年は違った。戦力的にも本気で優勝を狙えると思ったのだ。しかし結果は3位。夏場に勝ちきれなかった。後半バテてしまった。

 あれが悪かった、これが悪かったと言い出せばキリがないので、今年良かった点をどんどん挙げていこう!

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 まずは野手。最初はこの男。関根大気。

 なぜずっとレギュラーになれなかったのか不思議だった。今年やっと芽が出てスタメンを勝ち取った。(シーズン終盤はご愛嬌……)。守備の課題はまだあるものの来年以降もベイスターズを先頭で引っ張ってほしい。

 次に安定の宮﨑敏郎。

 35歳での首位打者はさすがとしかいいようがない。守備の面でも華麗な動きを見せていた。

 そして何といっても世界の牧。牧秀悟。

 何だろう、この牧が4番にいる安心感。打って欲しい時に打つ男。WBCの疲れは多少あっただろう。でもシーズンを通してそれを感じさせない活躍だった。

 そして……本人は結果に納得していないだろうが、佐野恵太もキャプテンとしてチームを支えてくれた。

 投手では森原康平。

 彼の投球、球質、立ち姿は見ていて気持ちがいい。特に2ナッシングからのど真ん中ストレート見逃し三振は私が現役の頃に追い求めていたものだ。さらにサウナ好きとあっては応援しない理由がない。推しがまた一人増えた。

 外国人ではバウアーにウェンデルケン、もちろんエスコバーも。彼らがいなければCSも怪しかったのではないだろうか。献身的な活躍をしてくれた。

 今永昇太も後半苦しい日々を過ごしたが、エースの活躍をしてくれた。

 そして一番は何といっても東克樹だろう。

 皆さんご存知の通り16勝で最多勝、さらに最高勝率とベイスターズシーズンMVPの活躍だった。タイトルにはないが両リーグの四死球率でも1位を獲得している(四死球率0.71)。CSは残念な結果となったが、初戦の先発を立派に務め上げてくれた。

 新戦力の林琢真や若手有望株の左腕・石川達也、右腕・宮城滝太、そして忘れてはならない私の最推し・坂本裕哉も来年さらに期待できる。ここに書ききれない色々な選手が本当に頑張ってくれた。

 ではなぜ優勝できなかったのか。

 必死に考えたが、出てこない。確かに細かいミスがまだ多いことやリリーフ陣の不調、あいつの調子がこいつの調子がと言い出せばキリがないのは百も承知だ。私は三浦大輔監督の采配が好きだしめちゃくちゃなことはしていない。選手のことを色々考えながら指揮を執っている。

 なので結論はこれだ……「今年は阪神が強かった!」

 以上である。

強くなるためには、前を向くしかない

 ベイスターズの2023年のシーズンは10月15日に終わった。

 繰り返すが、あの時ああすればよかったこうすればよかったと思っても何も始まらない。ただ事実として、敗れた。そのことは受け止める必要がある。その上で、これからどうするか。若手だろうがベテランだろうが、関係ない。練習でできなかったことが本番でできるはずはないのだから、本番で最大の力を発揮できるように何度も何度も練習するしかない。

 引退までに自分の理想とする野球ができたなんて人はほとんどいないと私は思う。だからこそ野球を辞めるその日までに、いかに自分の望む野球に近づけるか。そのためにどれくらい努力できるのか。そういう選手が「ヒーロー」になれると思う。悔しい思いは、経験として自分に残る。それを力に変えられるよう、がんばろう。蝦名、大田、今は眠れないくらい悔しいかもしれないけど、強くなるためには前を向くしかない。

 CSは本当に不思議な場所だ。二回勝てばファイナル進出、その後四回勝てば日本シリーズ進出。この感じは社会人野球の都市対抗予選に非常によく似ている。普段試合前に緊張で気持ち悪くなることはないが、私はCSの試合前から珍しく緊張していた。

 2017年、CSに出た際私は、シーズン中は大した成績を残していないのにCSにベンチ入りしてどうなのか、と余計なことを考えていたのだ。その時、チームサポーターの東さん(現ファーム施設担当)から「短期決戦に強いやつが絶対に必要になってくる。余計なことは考えずに強い気持ちを持って頑張れ、満塁でまた登板するぞ」と言われた。その通りになった。

 CSは気持ちの強い方が勝つ。

 精神論になってしまうが、私が2016年、2017年のCSで2アウト満塁を二回抑えられたのは、技術でも体力でもなく、強い気持ちだった。そんな気持ちでベイスターズを支え、投げ続けた男がもう一人。