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「絶対に見返してやる」育成出身の守護神候補、中日・松山晋也の闘争心はめらめらと燃えている

文春野球コラム クライマックスシリーズ2023

2023/10/23
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独特すぎる? 松山大明神の“ルーティン”

 将来はライデル・マルティネスから守護神の座を奪うと宣言する剛腕。マウンドへ上がるまでのルーティンも独特だ。ここでは一部だけだが、ご紹介しておきたい。

 寮や遠征先のホテルを出発する時は「ベッドのシーツが整っていないと気持ち悪い」という理由で、必ずベッドメイキングしてから部屋を出る。なんと清掃員想いなのだろう。インナーで着用するスライディングパンツや愛用のグラブは全て情熱的な赤色に統一。マウンドへ向かう際には、必ず右足でラインを跨ぐ。

 何より驚いたのは、ホームゲームで着用する帽子を今年一度も洗っていなかったことだ。今シーズン、松山が失点したケースは5回あった。うちビジターが3回(甲子園、東京ドーム、神宮)。ホームゲームだった9月18日の広島戦はFCユニホームで、いつも着用する帽子とは違っていた。

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「10月3日の最終戦で失点するまで、ホーム用の帽子では失点していなかったので、帽子のまわりがロジンの粉で真っ白でした。あの日打たれなかったら、来年もあのまま被っていたかもしれないですね(笑)」

 打たれていいなんてことは決してないが、無事あの帽子がランドリーに出されたことに妙な安心感を覚えたのは筆者だけではないだろう。

「絶対に見返してやるって、今でも思ってる」

 プロ1年目の松山に、対戦した中で印象に残っている打者を聞いてみた。

「巨人の坂本(勇人)さんです」

 即答だった。その理由も松山らしくていい。

「木下(拓哉)さんから聞いた話によると、打席に入る坂本さんが僕を見て笑顔で『今日も(目が)ガンギマッてる』って2回くらい話しかけたらしいです(笑)。僕の表情を見て打席で笑う余裕がすごいと思いました」

 無論、2000本安打をクリアしている稀代のヒットマン・坂本と松山ではキャリアが違う。対戦成績は2打数0安打に抑え込んでみせた。坂本に右腕の存在を示せたことは自信になったに違いない。

 打たれた翌日は、報道陣のエリアにやってきて「次は絶対抑えますからね!」と、試合前練習に行くほど負けず嫌い。だが、シーズン終盤は知らず知らずのうちに重圧を感じ、ホテルの宿舎でなかなか寝つくことができなかったという。

「嫌なことが知らないうちにフラッシュバックしてしまう」と朝まで打ち込まれたシーンが頭を巡ったそうだ。それでも、松山には負けたくない理由がある。

「入団した時、どこかで『育成選手』という目でまわりから見られていた。絶対に見返してやるって、今でも思っている。柳(裕也)さんからも『結果を出せばまわりは変わる』と言ってもらえた。だから、これから結果を出し続けるしかないんです。

 同期では、僕と樋口(正修)さんが支配下になりましたが、(野中)天翔はまだ育成。いつか一緒に一軍の舞台で活躍するのがささやかな夢です」

 オフはナゴヤ球場での秋季練習に参加し、オーバーホールと基礎練習の反復で投手としての総合力を上げている。12月以降の自主トレ構想については「まだ言えないっすよ~」と高らかに笑った。なんだか隠し球のネタを持っていそうだ。記者をしていたら、絶対に飛びついていただろう。

 来季は他球団からのマークも一層厳しくなる。そして自らの弱点も十分把握している。ただ、松山の豪快な投げっぷりには言葉では言い表せない爽快さがある。

 目指すのは守護神の座。絶対的守護神のライデルにガチンコ勝負を挑み、その座を奪った先には「球界最強」の称号が待つ。背番号90から目が離せない。

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