こんなニュースが舞い込んできた。米国時間3月11日、場所はアリゾナ州ピオリア。その日、大リーグのマリナーズに約5年半ぶりに戻ってきた44歳のイチローは、復帰戦となるオープン戦に1番・左翼で出場した。

 1回、そのイチローが慣れ親しんだ背番号「51」で打席に立つと、スタンドのファンはスタンディングオベーションで迎えたという。ことわっておくが、まだ、オープン戦である。

「アメリカの文化に粋というものはあまりないけど、こういうのはそう。これはもう、人の思いに応えたいという気持ちが生まれますよね」

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 イチローは感激してこう話したという。粋とは、江戸時代の美意識の一つとされる。「あの人は粋だねぇ」と言えば、身なりや振る舞いでそれほど自己主張しているわけでもないのに、洗練されていてかっこよさを感じる人を指す。光り物をやたら身に着けたり、誰かのマネをしたファッションをするでもなく、内面からにじみ出てくる美しさとでも言うのだろうか。

 いずれにせよイチローは、国としての歴史が浅く、何かにつけ大雑把で賑やかな人が多いように思う米国で、粋な文化と出会ったことがほとんどなかったのだろう。

 そんなアメリカの人たちが、たかがオープン戦にもかかわらず自らにスタンディングオベーションを送ってくれた。渡米18年目を迎えたイチローは、想定外の「粋」な祝福に面食らったのだ。

松坂大輔の中日デビュー戦での願い

 ここまで書けば分かってくれると思う。私が思い描いて理想とする松坂大輔のドラゴンズ公式戦デビューは4月3~5日の巨人戦で、松坂も「そこを目指している」と口にしている。チームにとって今季初となる本拠地ナゴヤドームでの3連戦。そのような晴れ舞台の先発マウンドに立ったとき、名古屋のファンには総立ちとなって松坂に拍手を送ってほしいのだ。

 僭越ながらこのようなお願いをするのには、松坂に対する贖罪と感謝の思いがある。

4月3~5日の巨人戦での公式戦デビューが予想される松坂大輔 ©文藝春秋