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 もうひとつの顧客層が首都圏や近畿圏に住む人たちだ。最近は二拠点居住、多拠点居住を実践する人たちが増えている。かといってあまり地縁のない戸建て住宅では家の管理が大変だ。そこで地方タワマンを買い、週末居住やリモートワークに活用するケースだ。もちろん、大都市圏のマンションに比べれば価格は割安なので、今買って数年後に売却して利益を得ようと考える投資目線があることも含まれる。彼らはある程度見晴らしが確保できれば、マンションを起点としてエリア全体を楽しみたい人たちなので手ごろな価格の中層部を買い求める傾向がある。また、この中層部は東京や大阪に転出することなく、地方都市の、主に第3次産業の職を得た子供が、同じ市内に住む親とは同居せずに選ぶケースも多いという。

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地方タワマンの上層部を買うのは誰か?

 それでは地方タワマンの上層部を買う人たちはいったい誰なのだろうか。地方タワマンの物件案内を覗くと、上層階は部屋が広めに作られているケースが多い。特に最上階はフロアに2戸から3戸程度の住戸しかなく、面積も100㎡(30坪)を超えるような仕様になっている。また販売価格も高層部にいくほど高くなり、戸当たりで1億円を超えることも珍しくない。

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 ある地方都市に講演のため出張した時の話だ。講演が終わって地元の複数の有力者との懇親会に出席した。この街では最近、大手デベロッパーが手掛ける地上30数階建てのタワマン分譲が行われる予定で、すでにモデルルームもオープン、街の話題を独占しているとのことだった。販売は順調との話だったが、地元の人たちの会話はもっぱら、最上階の住戸を誰が買うのか問題でもちきりになった。

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「やっぱり、あの部屋は○○会社の社長が買うのに決まっている」

「いやいや、俺は△△会社の会長が狙っていると聞いたぞ」

「ちがうちがう。なんといっても一番カネ持ってんのは□□会社のオーナーだよ」

 ここで名が挙がるのはいずれもその地方を代表する会社のオーナーたちだ。オーナーはいずれも地元の出身で、多くは豪壮な邸宅を構えている。わざわざタワマンを買って引っ越すわけではない。