タワマン最上階は名士であることの象徴
彼らが買う目的は、ずばり「天下をとる」ことだ。地方の中で自分が一番稼いでいる、あるいは地域のナンバーワン、名士であることの象徴としてタワマン最上階を買い求めるのだ。こうした人たちは“地方の豪族”とも表現できるのではないか。昔から地方の中枢を占め、商売を取り仕切り、政治にも口を出す。よそから来て商売をしようにも、この人たちの承諾がないと、なかなか販路すら開拓することができない存在だろう。また彼らの中でも順位があり、順位をめぐる思惑や争いが常にあるのだ。
買った部屋をどう使うのか。彼らにはあまり住むという目的はない。お客様をもてなすための迎賓館、地元の仲間たちを呼んでのパーティー、会社の福利厚生施設としての利用などが中心となっているという。
どちらかといえば、今後あまり経済的な発展が見込めない地方都市で、超高額のマンションを買っても、将来大きな利益になるとは思えない。ましてや賃貸で運用しようにもそんなニーズが存在することは期待できない。それでもかまわないのだ。名士の象徴として、タワマンを手に入れること自体に目的があるのだから。
地方タワマンの未来
現在、デベロッパーが企てるのは、人口が20万人から30万人程度の地方主要都市でのタワマン供給だ。タワマンは概ね人口10万人あたりで1から2棟程度の需要があるといわれている。該当する主要都市に最初に建設の槌音を響かせれば、確実に需要が見込めると考えているからだ。そうした意味では、デベロッパーも地方都市でのタワマン戦争の先陣を切るべく日々戦っているのである。
だが、建物は有限。これから20年、30年と時代が進む先に待つ未来が地方都市のすべてのタワマンにあるとは思えない。“地方豪族”の命も有限である。居住ニーズが少ない分、資産価値の下落は激しく、主を失ったタワマンの廃墟化は意外に早いのかもしれない。