2021年10月、当時19歳の男が甲府市の住宅で夫婦を殺害し、住宅に放火した罪などに問われている事件。10月25日に開かれた初公判で、遠藤裕喜被告(21)は裁判長からの問いかけに一切答えず、最後まで黙秘を貫いた。

 19歳の少年は、なぜ理不尽な犯行に至ったのか。事件を報じた「文春オンライン」の記事を再公開する(初公開:2021年10月14日/遠藤被告の名前・年齢は公開当時のまま)。

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 甲府駅から南東6キロ。10月12日の未明、ぶどう畑が点在する閑静な住宅地で惨劇は起きた。

「夜中に『やめて~』という女性の声で目が覚めました。発砲したような大きな音が聞こえ、間も無くして警察や消防が集まってきた。空がオレンジ色に染まり、遠くにいてもバチバチと顔が熱くなるくらい火の勢いが強かった。火の粉が周囲に散っており、周辺は交通規制も敷かれ、やじ馬でごった返していました。何人かの警察官が、炎とは別の方向に走っていって誰かを探しているようでした」(近隣住民)

全焼した山川さん宅 ©文藝春秋 撮影・上田康太郎

 全焼した木造2階建ての住宅からは2人の遺体がみつかった。遺体は、家主の山川章弘さん(仮名)とその妻とみられ、警察は身元の確認を急いでいる。

 山川さん夫妻には2人の娘がいた。事件当時、姉妹は2階のベランダから脱出し、「泥棒に入られた」と警察に通報したという。

 事件発生から9時間が経過した12日夜、「人を殺してしまった」と泣きながら駐在所に出頭したのは、19歳の少年Aだった。社会部記者が解説する。

10月12日深夜、放火された山川さん宅(近隣住民提供)

「Aは山川さんの自宅に押し入り、次女と鉢合わせた際に、背後から彼女を凶器で殴り、軽症を負わせた疑いで、まずは逮捕されました。山川さん宅の焼け跡からは、灯油のようなものをまかれた痕跡がありました。また、山川さん夫婦と見られる遺体には刃物で刺されたような傷があったようです。

 Aは逮捕時には、小指を骨折し、火傷も負っていたようで現在病院で治療を受けている。今後は、次女に対する傷害容疑だけでなく、放火や殺人の容疑でも捜査されるが、Aが19歳の『少年』ということで県警もマスコミには口が堅く、慎重に捜査を進めるとみられる」