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振付師・竹中夏海が明かす「藤井隆とPerfumeのダンスが“すごい”理由」

“テレビっ子”竹中夏海インタビュー #3

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Perfumeのダンスは、まさに阿吽の呼吸

―― パフォーマンスの完成度でよく引き合いに出されるEXILEやPerfumeのダンスを、竹中さんはどうご覧になっているんですか?

竹中 ある程度上手だと、あとはもう好みの問題になってきますね。LDH系のダンスは、振付けにプラスαが多くて派手だなぁって。Perfumeさんに関しては私はただのファンですが、1つの振付けに対して3人の解釈が全く同じなのがすごいなぁと思います。長年一緒にやられてきたからこその、まさに阿吽の呼吸ですよね。これ、たとえば個々にうまいダンサーが集まってもいきなりこうはできないんですよ。解釈のすり合わせってそれくらい細やかにやらないと難しい。だから短時間で踊りを揃える技術は、プロのダンサーよりも全然長けてるんじゃないかと思います。

―― ちなみにフィギュアスケートはご覧になりますか?

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竹中 平昌オリンピックは、そこまで熱心に観なかったんですけど、好きですよ。でも技術が正確な選手よりも、多少着地が荒くなっても、「えっ、今のタイミングで飛んだの?」みたいな選手のほうに惹かれます。ジャンプ1つ成功させるために賭けている感じを観ていると冷めちゃうんですよね。競技なんだから技術を追求するのは当然でしょって、分かってるんですけど……(笑)。だから、みんな楽しそうに滑ってるエキシビションはめっちゃ好きです。

 

蒼井優ちゃんと森山未來くんは、身体全体で何かを訴えてくる

―― 藤井隆さんや教え子以外に「この人のダンス表現がスゴいな」って思った人はいますか。

竹中 蒼井優ちゃん。彼女は“蒼井優みたいなダンス”しますね。

―― 蒼井優みたいなダンス(笑)。たしかに蒼井さんはモダンバレエをやっていましたよね。

竹中 私、本物志向ではなくて、レプリカが好きなんです。レプリカの方が面白みがあるって感じちゃう。蒼井優ちゃんのダンスは、プロのダンサーと比べてめちゃくちゃ巧いというわけではないけれど、でも、なんか魅力的な踊りをするんですよ。『花とアリス』にしても、『フラガール』にしても、どうしてこんなに力まずにさらっとできるんだろうって。さらっとしているのに、釘付けになっちゃうダンスというのは、彼女の演技と同じだと思います。あと、森山未來くんはすごいですね。

―― イスラエルにダンス留学もしてましたね。

竹中 私、技術至上主義じゃないのに、あの人に関しては、もうぐうの音も出ない。ただうまいだけじゃなくて、ちゃんと観てて面白い。森山くんはダンスも上手なんですけど、ダンスのメソッドが普段の所作に出てるときがあって、それを見つけちゃうと、血がブワッと上がる(笑)。『百万円と苦虫女』という映画で、自転車に飛び乗って走るときの所作とかは、もう踊れる人じゃないとできない動きですね。動きがめちゃめちゃ軽い。それをコミカルに切り取ったのが、『モテキ』なんだと思うんです。ダンスシーンだけじゃなくて、ベッドからピョン、ピョンと起き上がるところとか、彼が動けるのをわかってて入れてる演出ですよね。たしか行定勲監督が、『セカチュー(世界の中心で、愛をさけぶ)』に関するコメントで「森山くんが全速力で走るだけで泣けてくる」みたいなことを言ってたんです。まさにそれです。

―― 身体全体が何かを訴えかけてくる表現。

竹中 技術だけのものって、あぁ、うまいよね、うまいのはわかったんだけどさ、みたいな気持ちにわりとなるんですけど、森山くんの場合はそうならない。ただの技術者じゃない、表現者なんだと思います。

―― 竹中さんが今、アイドルの子たちに振付けを通して伝えていることは、そういう表現の方法なのかなって思います。

竹中 そうですね。さっき言ったように、技術が肯定されるアーティストの世界もあれば、たとえダメなところがあっても、その全存在が肯定されるアイドルの世界もある。私はその、存在そのものが愛される表現の世界に、これからも賭けていきたいと思っています。

 

#1 闇を抱えてた『セーラームーン』女優が、アイドルの振付師になるまで
http://bunshun.jp/articles/-/6667

#2 振付師・竹中夏海が語る「アイドルに大切なことはすべて嵐に学んだ」
http://bunshun.jp/articles/-/6673

写真=鈴木七絵/文藝春秋

たけなか・なつみ/1984年生まれ、埼玉県出身。2007年、日本女子体育大学舞踊学専攻卒業。HKT48、NGT48などの大型グループからPASSPO☆、アップアップガールズ(仮)などの実力派ライブアイドルまで、担当したアイドルは300人にも及ぶ。ほかにも藤井隆やヒム子(バナナマン 日村勇紀)、スーパーJ POPユニット・ONIGAWARAなど、性別や年齢を問わずアーティストの“アイドル性”を引き出すことに定評がある。
自身のアイドル愛に溢れる視点を生かし、数々のアイドルダンス連載を持ち、「ラストアイドル」(テレビ朝日)の審査員も務めている。著書に『IDOL DANCE!!!〜歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい〜』などがある。公私共にアイドルに特化したコレオグラファー。

振付師・竹中夏海が明かす「藤井隆とPerfumeのダンスが“すごい”理由」

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