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「悔いがないかといえば、ウソになる」

 11月には静岡で12球団合同トライアウトを受けた。ここではファンに励まされた。静岡草薙球場にはマリーンズのユニフォームを身にまとったファンの人が応援に来てくれていた。「応援しています」と栄養ドリンクなどの差し入れを手渡された。

「こんなところまで、わざわざボクの応援に来てくれているファンの方々がいたことに驚かされました。そしてマリーンズに入団してボクは本当に幸せだったなあと感じました」

 テスト終了後、他球団から連絡がある期限とされるのは1週間。ひたすら待った。しかし残念ながら吉報は届かなかった。期限切れと同時に家族や恩師、知人などにも相談をし、プロ野球人生に幕を閉じる決意を固めた。その後、マリーンズから子供たちを指導するアカデミーコーチ就任を打診された。

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「悔いがないかといえば、ウソになる。だけど、やるべきことはやった。これからはお世話になった球団のためにどんな形でもいいので、力になりたいと思いました。ですので最初はアカデミーコーチとして、今度はおもてなし担当として与えられた役割の中で、しっかりと期待に応えたい。来場者の皆様に楽しかったと言ってもらえる球場作りをしたいです」

上野に課せられた役割とは

 ZOZOマリンスタジアムでのオープン戦が始まると本格的なおもてなし活動が始まった。開場時はゲートで来場者をお出迎え。その後はコンコースや様々なところに足を運び来場者の声を聴いたり接客を担うクルーに声かけをしている。試合後は再びゲートでお見送り。時には現役を知るファンから「頑張ってね」と声を掛けられる。掲げるテーマは「ENJOY マリン」。日々、球団職員やクルーが笑顔で来場者に懇切丁寧に対応するように呼び掛ける。なかなか成果が数字などでは見えにくい仕事ではあるが、一日の中で一人でも多くのファンの方の笑顔を見たい。その思いで取り組んでいる。

「現役の時はこのような仕事や活動があることすら知らなかった。もし知っていたら自分の中でなにか変わっていたかもしれない。これからはこういう活動があることを後輩選手たちにも伝えていきたいと思うし、それは自分に課せられた役割の一つだと思う。いろいろな人の架け橋をしたい」

 現役時代は誰よりも早く球場入りをして、誰よりも遅くまで練習をしてきた。マリーンズ屈指の努力家で知られていた上野だから、これからきっとZOZOマリンスタジアムをさらに笑顔で溢れる元気いっぱいの空間へと進化させるであろう。井口資仁新監督の船出で注目をされる千葉ロッテマリーンズ。おもてなし担当の笑顔と元気にも注目をして欲しい。

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報)

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