103名のIOC委員のうち、幹部と当事者を除いた97票の過半数をどうやってかためていくか。集票活動のせめぎあい、まさにバトルですよ。その戦いの中で東京に決定した理由はさまざまあると思いますが、はっきり言えることはIOCの倫理規定というルール上、裏金なんてまったく使えなかったということです。

 裏金なんて使えないと主張していた。なるほど、だからこそ「1冊20万円のアルバムを100冊余」なのか。でもこれも裏金そのものでは? 馳はプロレスラーの頃から「裏投げ」を得意にしていたが、政界でも使っていたのか。安倍元首相の「金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」という応援を背にして。

馳浩(右)に話を聞いた筆者 ©文藝春秋

政治家・馳浩の正体

 さて、こんな発言をすれば当然騒ぎになる。翌日馳は記者団に対して「事実誤認だった」「五輪招致に関わることは控える」と意味不明なことを繰り返した。長年にわたって馳浩を見てきた私としては今回の件に「政治家・馳浩」の正体があると感じた。

 それは2つのポイントだ。

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(1)地元石川ではマスコミに対してやりたい放題だから東京でも黙らせることができると勘違いした

(2)虎の威を借りる馳浩

 まず(1)から説明しよう。

 発端となった東京の講演は報道陣にも公開されていた。馳氏は発言に先立ち、出席者に「メモを取らないで」「外で言ったら駄目」と伝えたという。つまりマスコミも封じることができると考えていたのだ。オフレコと言われても、報じなければならないほどの重大発言があればオフレコを解くのは今年2月に岸田政権の荒井勝喜首相秘書官が更迭された件があったばかりなのに。

 しかし馳は報道陣を黙らせることができると考えた。それはなぜか? 実は今年、地元石川で馳知事はマスコミに対してやりたい放題なのである。

メディアへの圧力

 おさらいしよう。馳知事は1月の定例会見で、自身が元日に出場したプロレスの興行をめぐり、馳氏の意向で石川テレビに試合映像を提供しなかったことを明らかにした。理由はこうだ。