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連載池上さんに聞いてみた。

不倫スキャンダルがあっても政治家として大成した人物は?――池上彰氏に聞く

不倫スキャンダルがあっても政治家として大成した人物は?――池上彰氏に聞く

池上さんに聞いてみた。

2017/09/18

genre : ニュース, 政治

Q 不倫スキャンダルがあっても政治家として大成した人物はいる?

 相次ぐ政治家の不倫スキャンダル。日本に限らず、不倫スキャンダルは世界中でニュースになりますが、過去にスキャンダルがあっても、その政治手腕や政策が高く評価されている政治家はいるのでしょうか。(40代・女性・主婦)

A 有名な例はアメリカのジョン・F・ケネディ大統領です。女優のマリリン・モンローとの関係は有名です。

 彼は腰痛の持病治療のための薬の副作用で性欲が異常に亢進していたとされています。このため、選挙運動で全米各地を回る際、集会に来ている女性が気にいると、ホテルの部屋に呼んでいました。これは当時、陣営の人たちや取材の記者たちは知っていましたが、誰も問題にしませんでした。この話が一般に知れ渡るのは、ケネディの死後です。

 ケネディ暗殺後、副大統領から昇格したジョンソン大統領は、公民権法を成立させ、黒人差別撤廃に力を尽くしたことで知られていますが、在任中、しばしば大統領執務室に女性を連れ込んでいました。

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 その際、身辺警護に当たるシークレットサービスに対し、「妻が来たら知らせろ」と見張りを命じていました。これも、当時は問題になりませんでした。記者たちは、「政治家のへそから下は問わない」という「常識」を持っていたのです。これはアメリカも日本も同じでした。

持病の治療で性欲が異常に亢進していたというケネディ大統領 ©共同通信社

 アメリカの公民権運動で有名な黒人のマーティン・ルーサー・キング牧師にも複数の女性がいたことがFBIの盗聴で明らかになっています。

 日本ですと、田中角栄元総理には複数の女性がいたことを、当時の記者たちは知っていましたが、新聞記者も週刊誌記者も書きませんでした。

 月刊「文藝春秋」が、立花隆氏の「田中金脈の研究」を掲載して大きなニュースになった際、同じ号にノンフィクション作家の児玉隆也氏が「淋しき越山会の女王」というタイトルで田中元首相の女性問題を取り上げましたが、雑誌発売時は、大きな話題にはなりませんでした。

 政治家は、その能力で判断される。女性関係は問題にされない。これが「常識」だったのです。日本で問題にされるようになったのは、宇野宗佑氏が総理に就任した直後、「サンデー毎日」が女性スキャンダルを取り上げてからでしょうか。アメリカはビル・クリントン大統領のときからです。

 女性問題は抱えているが有能な政治家と、身辺は清潔だが無能な政治家と、どちらがいいか。もちろん身辺が清潔で有能な政治家がいいに決まっているのですが。

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