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まるで経営者 DeNA・筒香嘉智の知られざるリーダーシップ

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/03/30
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筒香がメディアの前で発する言葉の主語の変化

 2010年にベイスターズに入団した筒香は、1年目からイースタンリーグで26本のホームランを放ち(新人としては新記録)、一軍に昇格し、初安打をホームランで記録しています。大きく期待されましたが、2年目、3年目と伸び悩み、4年目の2013年はわずか1本のホームランに終わっています。この時点で、もちろん無限大の可能性を秘めた選手であることは間違いありませんでしたが、ここまでの選手に育つことを信じていた人は少なかったかもしれません。低迷こそしていましたが、筒香は常に3年先を見てトレーニングを積み、目先の成績に左右されることなく着々と土台を築いていました。2014年以降の筒香の成績は誰もが知るところです。

 そんな、「個人」の成績以上に、筒香の貢献は凄まじい。今日の本題は、まさにここです。

 メディアの前で筒香が発する言葉の主語が、「チーム」になったのが、2016年の春ごろから。あのあたりから、ベイスターズは変わり始めました。会って話を聞くときも、筒香の口から出てくる言葉は、「どうやったらチームが強くなるか」ということだけ。自分の成績や、打ち方についての話は全く出てこなくなりました。チームが強くなるために、自分はどう振る舞うべきか、どんな言葉をチームメイトにかけるべきか、そんなことをずっと話しています。それはもう、プロ野球選手と話しているというより、経営者と話をしているような感覚です。梶谷が、「ゴウのリーダーシップはすごい。チームのために、言いにくいことも言えるし、何より、アイツが言ってることとやってることが一致してるから、みんな言うことを聞く。年下だけど、本当に尊敬してる」と、しみじみ語っていたことを思い出します。

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筒香のメディアの前で発する主語が「チーム」に変わった頃から、ベイスターズは強くなり始めた ©文春野球

 こうして後から文章にすると、非常に簡単なことのように思えますが、低迷しているチームを強いチームにするのにどれだけエネルギーが必要か。そこに、表でも裏でも、どれだけ筒香が活躍したかを考えると、目に見えている成績だけではない、計り知れない存在意義を感じます。

 最近の筒香の主語が、「日本の子供たちが」という言葉に変わってきていますね。これはもう、野球選手とか、チームとかという枠を超えて、もっと大きな人間になる前兆です。筒香がいれば、ベイスターズは大丈夫。そう思わせられるのは、大魔神以来かもしれません。僕からすると、筒香が新時代の大魔神にさえ見えてきました。
以上、今年のベイスターズの話をする前にどうしても伝えておきたい、「筒香の無限大の貢献を忘れてはならない」というお話でした。

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