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「真っ平ら」のきっかけとなった先輩とは?

 ところでカープには「つば真っ平ら」の選手は少ない。菊池の他はジャクソン、バティスタ、メヒアといった外国人選手が主である。逆につばの勾配が急な選手として真っ先に思い浮かぶのがマエケンこと前田健太である。カープ在籍時のマエケンの急勾配のつばは譬えて言うなら合掌造り。2016年にドジャースへ移籍してからはつばが次第に緩やかになっているマエケンだが、彼を慕ってシーズンオフに合同自主トレを行う「チーム・マエケン」の選手、特に中田廉らに急勾配つばスピリットは受け継がれている。一方「いつまでもマエケンさんに頼っていてはいけない」と「チーム・マエケン」からの独立を宣言した大瀬良大地のつばは、昨シーズンに比べて若干勾配が緩やかになっているように見える。

帽子のつばと屋根の勾配の比較 ©オギリマサホ

 対してカープの「つば真っ平ら」は菊池が草分けになるのかと考えた時、ある選手の顔が思い浮かんだ。2015年にカープから戦力外通告を受けたサイドスロー右腕、池ノ内亮介である。菊池にとっては中京学院大学の一学年先輩にあたる。育成選手契約から支配下登録され、2014年には一軍登板を果たした池ノ内。その池ノ内の帽子のつばが真っ平らであったのだ。菊池は池ノ内について、以前インタビューで「僕がプロにいけたのは、半分以上は池ノ内さんのおかげだと思っています」(『球団公認 広島東洋カープ YOUNG HEROES』宝島社/2015年)と語っていた。池ノ内目当てで大学を訪れたスカウトの目に菊池が留まり、プロへの道が開かれたというのだ。

 その言動などから自由奔放なイメージを持たれがちな菊池であるが、実は周囲の人間や先輩に対して細やかな気遣いをする人物でもある。前述の菊池の次元ヒゲは、廣瀬純(現・カープ一軍外野守備・走塁コーチ)に勧められたことから伸ばすようになったという。また昨シーズン、菊池の帽子のつば裏には自身の背番号「33」の他に「38」という数字が書かれていた。胃ガンからの復帰を目指す赤松真人の背番号である。菊池が折に触れて赤松に連絡を取り、さりげなく励まし続けていたことも知られている。

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 このような先輩思いの菊池だからこそ、あの「つば真っ平ら」には機能的な目的だけではなく、惜しまれながらチームを去った先輩・池ノ内への敬愛の念が込められているのではないか、とふと考えてしまうのである。

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