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 かつて論壇と呼ばれていたような空間や日本の意識が高そうなビジネス界隈は威圧的なムンムンする男性ばかりで属性分布が狂っているので、気が引けてしまいます。そういった場所にお声がけ頂いたときは女性や若者の参加者をなるべく増やしてもらうように提案して、その結果、返事が返ってこなくなることがよくあります。

 逆に言えば「同じ人と仕事をし続ける」以外はだいたい何でもアリで、どんな怪しい人やそろそろ逮捕されそうな人でも、一度は接してみたいと思ってお会いするようにしています。

「焚き火というよりほとんど火事」(成田氏)

(3)睡眠障害は治さない

 日本とアメリカをちょくちょく往復する生活をしているので、よく「時差ボケは大丈夫ですか」と聞かれます。ただ、自分のなかでは「時差ボケ」というものが存在していないんですね。

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 同じ時間に寝て、同じ時間に起きるという規則的な生活がどうしてもできない。夕方まで寝たり、逆に朝4時から活動しはじめたり。体内時計がランダムなんです。絶えず時差ボケしているような日常なので、日米を移動すると、むしろ普段の時差ボケが直るような感覚があります。

 1つの場所でちゃんと社会生活を送るなら私の睡眠障害はただのネガティブな障害だと思いますが、あっちこっち飛び回る生活なので、それに耐えられる、打って付けの特殊能力を持っていると前向きに考えてもいいのかもしれません。

 と言っても、10代の頃は「これはまずい」と思って、睡眠障害を治さなくてはと悩みました。でも、治そうと思ってもどうしてもダメ。そのことに罪悪感を感じたり、生活習慣を整えるために疲弊する時期が続くと本末転倒だと思って、開き直ったらこの有り様です。

本記事の全文、成田悠輔氏による「ボーツと火を眺めて頭と心のスイッチを切る」は、「文藝春秋」2024年1月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されています。