4月17日から19日にかけて、広島東洋カープ対東京ヤクルトスワローズ3連戦が行われた。17日は呉で、18日と19日はカープの本拠地・マツダスタジアムでの一戦。結果的にヤクルトは3連敗を喫し、昨年の優勝チームと最下位チームとの実力差を改めて痛感することとなってしまった。そして、それ以上に残念なことがあったのだけれど、それは後述したい。この3連戦のうち、僕は18日と19日の両日、マツダスタジアムのビジターパフォーマンス席(通称・ビジパフォ席)で試合を観戦した。この席はビジターチームのファンのために用意された専用の応援席である。

今季からスタートした「燕征(えんせい)」企画

 今年最初のマツダスタジアム開催だということもあったし、抱えていた大きな仕事が一段落したので、休暇を兼ねてのんびりしたかったこともあった。それに、この両日はプロ野球ファンとして注目したい「ある試み」があったので、ぜひ自分の目で確かめてみたいという思いもあった。

 それが、ヤクルトが今季からスタートした「燕征(えんせい)」企画だった。これまで主に東京ドームや横浜スタジアムなど、首都圏を中心に開催されていた「ビジター応援デー」を首都圏以外に拡大。今シーズンは、今回のマツダスタジアムの他にも、甲子園球場、ナゴヤドームはもちろん、楽天の本拠地・楽天生命パーク宮城などでも行うことになったのだ。

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「ビジター応援デー」とは、ヤクルトファンクラブ「スワローズクルー」会員がビジター球場に応援に行った際に、来場ポイントや特製ピンバッジなどがもらえるイベントのことで、今回のケースで言えば、18日、19日ともスワローズクルー会員は来場ポイントと広島風お好み焼きとつば九郎がモチーフになったピンバッジが、18日は1800個、19日は700個、先着で配布されることになっていた。

 さらに、18日はスワローズクルー会員だけではなく、ビジパフォ席のチケット購入者全員に、緑色の「燕征 燕パワーユニフォーム」が配布されることとなっていた。「自分も特製ユニフォームを着て、ビジパフォ席が緑色で埋まる瞬間を体感してみたい」という思いを胸に、僕は広島に向かったのだった。

18日と19日でまったく異なるビジパフォ席の光景

 そしてもう一つ、自分の目で確かめてみたかったのは、18日はおよそ1700のビジパフォ席すべてがヤクルトファンに解放されるのに対して、19日はビジパフォ席の約5分の3をカープファンに、残り5分の2をヤクルトファンに分割して試合を行うという点。ちなみに、マツダスタジアムのビジパフォ席にはこんな看板が掲げられている。

ビジターパフォーマンス席の注意書き ©長谷川晶一

 しかし19日はビジパフォ席でありながら、カープの応援が可能となるのだという。「ファン同士のもめごとなど、無用なトラブルが起きないのだろうか?」という懸念もあった。「一体、当日はどうなるのだろう?」という思いもあった。そして、その懸念は現実のものとなってしまったのだった……。

 18日の試合は2対3で惜敗したものの、ビジパフォ席が緑に染まる光景を目の当たりにして、静かな興奮を覚えた。一方、翌19日の試合は延長の末4対5でサヨナラ負けという悔しい思いを味わいつつ、半分以上が赤に染まるビジパフォ席を見て、「前日とはまったく異なる光景だな」と驚いていた。携帯で撮影した写真なので、不鮮明かもしれないけれど、その対比を見てほしい。上が18日、下が19日のものである。

上が18日、下が19日のビジターパフォーマンス席 ©長谷川晶一

 19日の写真で言えば、ちょうど「タナカの〈ふりかけ〉」の看板の切れ目辺りで、カープとヤクルトのファンが区切られているのがわかる。そして、両者を隔てる通路には柵のようなものはなく、撮影時点では警備員が一人だけ立っているのが確認できる。つまり、基本的にはビジパフォ内であれば両チームのファンの移動は自由にでき、どの入り口からでも行き来できる仕組みになっていたのだ。