「ストライク!」。キャッチャーミットに絶好球が吸い込まれ、審判が派手なゼスチャーで「アウト!」のコールをしてから思い出したようにバットを振った打者、といっては失礼だろうか。カープ球団がようやく重い腰を上げてチケット販売についての対策を講じるという。
3月1日に売り出す今季の公式戦の前売り入場券について、いままで何試合でも何枚でも購入できていたものを、「ひとり一度に5試合までに制限する意向である」と1月27日に地元紙などが報じた。
チケット問題についにメスが
かつて広島市民球場で、牧歌的な観戦に親しんできたファンとしては隔世の感なきにしもあらずだが、ここ数年、全国区の超人気球団となったカープのチケットが入手困難となって、一部のファンからは苦情が出ていた。また、ネット上で法外な値段で売買されるなど社会問題化しているのはご存知の通り。いわばカープのチケットは「真っ赤なプラチナペーパー」と化してしまっている。
カープ球団は、これといった打開策を見出せないという理由でこれまでチケット問題を先送りにしてきた。ようやく今回、販売方法にメスを入れることになったようで、今までの状況を黙認したままだったら本当に「三振アウト!」になりかねなかっただけに、まずはプチ朗報といってもいいのだろう。
建設的な発想とは思えない「分断と排斥の論理」
はたして今回の措置でチケット問題がどれほど改善されるのかは見守りたいが、それにもまして気になる発表が、これに先立つ1月25日にあった。なんと、ベイスターズとスワローズ、ドラゴンズの3チームとの試合に限って、マツダスタジアムのビジターパフォーマンス席を分割してカープファンに解放するというのだ。
ビジターパフォーマンス席(ビジパフォ席)とは、もともとビジターチームのファンのために設定した席だが、これをカープファンが購入。そのまま下のコンコースなどに大挙して流れ込んでしまうため混雑するばかりかトラブルが発生していた。その対抗措置だという。
これを聞いて思い出したのが、2015年のベイスターズ戦。5月16日の試合でこのビジターパフォーマンス席を分割してカープファンに開放するという“前科”がカープ球団にはあった。ベイスターズ戦のビジパフォ席の入りが悪いことから、空席を惜しんでのことだった。
この軽率ともいえるアイデアは、ベイスターズファンばかりか一部のカープファンからもブーイングを浴びひんしゅくを買ったからか、球団は二度と実施することはなかった。
それを今シーズンからはおおっぴらに、そしてすべての試合で実施するというのだ。驚きを通り越して、唖然とするしかない。
今回は混雑の解消、トラブルの防止が理由とされているが、同じ檻にトラとライオンとを放そうというのだ。混乱とトラブルの現場をビジパフォ席に棚上げしただけという結果にもなりかねない。