なぜベイスターズファンの顔を浮かべなかったのか
2015年にビジパフォ席を“略奪”した時は、チャーターした新幹線を東京駅から走らせて停車駅ごとにカープファンをピックアップ。その一団で「ビジパフォを赤く染める」という企画ツアーだった。
参加費は5000円、片道の乗車券料金とビジパフォ席入場券、応援グッズ込みという出血大サービスだった。つまりは球団持ち出しでビジパフォ席をカープファンで埋めたわけで、昨今の新球場バブルで金庫が膨れ上がり、思わずはしゃいだわけでもないだろうが、収支を考えれば企画の意図はよく見えなかった。
あの企画を考えついたとき、なぜカープ球団はベイスターズファンの顔が浮かべなかったのだろうか。なぜ「ようこそビジパフォへ!」と銘打って、彼ら彼女たちを招かなかったのだろうか。魅力的なサービスとセットにして呼びかければ、同じようにビジパフォ席をいっぱいにするくらいのことはできたはずだ。
もしそうしていればビジパフォ席問題でひんしゅくを買うこともなかった。それどころかその太っ腹ぶりは評価されただろうし、それが好印象となって将来のビジパフォ席の顧客も発掘できたかもしれない。
新球場のコンセプトとしてビジターファンに解放した「聖地」は、あくまでも彼らのものとして提供するのが筋だろう。球団の勝手な思惑で切ったり貼ったりしていいものではない。その席を埋めたければ、ビジターのファンにアピールすることが本筋のはずだ。
それが今回もまた球団が「排除の論理」を振りかざしてしまったことは、残念だし、落胆を禁じ得ない。
対象は前記の3チームに限るというが、ここ数年はスタンド寂しいドラゴンズのナゴヤドームは別にして、ベイスターズの横浜スタジアムもスワローズの神宮も、カープファンが大挙して押し寄せてホームチームのファンが入れない事態となっている。ことは逆の現象だが、これを理由にカープファンが横浜や神宮のスタンドから無慈悲に締め出されることにでもなったら、彼の地のカープファンは果たしてどんな心境になるのだろうか。
カープの試合を観戦できない不幸を身にしみて実感しているカープファンにとっても、この問題は他人事ではないだろう。
今回のことが悪しき前例となって、球団が恣意的に特定エリアから特定のファンをしめ出すことが慣例になってしまったらと考えると、背筋も凍る思いだ。
「排除の論理」をかざして絶頂にあった人気が一瞬にして急落し、選挙に惨敗してしまった政党があったことは、まだ記憶に新しい。
カープ球団にはそのようなテツを踏んて欲しくないと願うばかりだ。
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