松本人志氏が文藝春秋を相手に起こした裁判について、ニュース番組や情報番組では弁護士や専門家が登場して伝える「解説報道」が積極的に行われるようになってきた。
そのきっかけになったのが、1月24日に吉本興業が改めて発表した新たな方針だろう。
吉本興業は松本人志氏に関する昨年12月27日発売の「週刊文春」の報道を受けて、「当該事実は一切なく」と完全否定し、松本氏に同調するコメントを発表した。ところが新たな方針では松本氏と距離を置くような姿勢を打ち出して、初動の対応を反省している。(執筆:ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授の水島宏明氏)
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吉本興業は「態度を一変」「180度方針転換」
初動のコメントについて、社外有識者を交えたガバナンス委員会では、「世間の誤解を招き」「何を指しているのか不明確で混乱を招いた」「今後慎重に対応すべきである」などと厳しく指摘されたことを明らかにした。
「複数の女性が精神的苦痛を被っていたとされる旨の記事に接し、当社としては、真摯に対応すべき問題であると認識しており」、「外部弁護士を交えて当事者を含む関係者に聞き取り調査を行い、事実確認を進めている」(吉本興業HP)という方針を示した。松本氏とは一線を画し、「何らかの形で会社としての説明責任を果たす必要がある」というガバナンス委員会の指摘も明らかにした。
番組などでは「態度を一変」「180度方針転換」と様々な表現が使われているが、吉本興業が大きく姿勢を変えたことは間違いない。
独自に取材し、報道している番組はまだない
この件に関して、独自に問題を取材し、報道しているニュース番組はまだない(2月2日現在)。自ら裏取り取材をしたり、類似のケースを調査するといった取材はしていないということだ。筆者が注目したのは、そこまで踏み込むことはなく、「解説報道」として芸能問題の法務に詳しい弁護士やリスク管理の専門家などにコメントを伝えた各番組の周到さだ。
TBSはジャニーズ性加害問題から続く熱心さで、この問題を取り上げている。
1月24日の夕方ニュース「Nスタ」では、芸能・エンタメ分野の法律問題を専門とする河西邦剛弁護士が出演して、吉本興業の姿勢が変化した理由について、「第2弾、第3弾、第4弾と文春報道がなされるなかで、『パーティーも開いていない、性的交渉もない、性加害もない』と段階的なレベルで、すべてが事実無根だというニュアンスが変わってきた」と話し、今後、吉本興業が松本氏に損害賠償を求める可能性もありうると解説した。