旧ジャニーズ問題で各局は反省していたが…
旧ジャニーズ事務所の性加害問題で、「外部専門家による再発防止特別チーム」はエンターテインメント業界全体に改善を促していた。
「エンターテインメント業界は、従来、性加害やセクシュアル・ハラスメントが発生しやすい土壌があると指摘されてきた」(旧ジャニーズ事務所の「再発防止特別チーム」による調査報告書)
昨年、ジャニー喜多川氏の性加害問題ではテレビ各局は検証番組を放送して、「メディアの沈黙」を各局は大いに反省して、社長や幹部らが自らの姿勢を改める決意表明をした。
一例としてあげるならば、TBSの佐々木卓社長は、2004年、ジャニー喜多川氏の性加害の真実性を認定した高裁判決が最高裁で確定した際に、ニュースでジャニーズ性加害問題について取り上げなかったことへの所感を問われ、自身も当時報道局で働いており、定例会見で自らの認識の甘さを認めた。
「人権意識の乏しさ、芸能界のニュースに対する短絡的な見方を思い出すと、本当に恥ずかしいと思っている。報道機関としての役割を十分に果たせなかったことを深く反省している」(2023年9月20日)
また、フジテレビの検証番組「週刊テレビ批評特別版 旧ジャニーズ性加害問題とメディアの沈黙」(2023年10月21日)では、渡邉奈都子報道局長が「報道すべきはきっちり報道していく」と所信表明していた。
「どんな対象であれ、取材すべきはしっかり取材し、報道すべきはきっちり報道していく。この当たり前の基本を改めて徹底して参りたいと思います。そして絶えず、今この瞬間の報道姿勢は本当に正しいのか。本当に間違っていないのか。自問自答を重ねて、日々の検証を怠らないようにして参りたい」
旧ジャニーズ事務所と同じような構図がなかったか
週末のバラエティ番組でも松本人志氏がテーマになって、裁判の今後の見通しや吉本興業の問題がスタジオで熱心に議論されていた。
1月28日のTBS「サンデー・ジャポン」では吉本興業の責任について、「The HEADLINE」編集長の石田健氏は次のようにコメントした。
「この問題が松本さん個人の問題ではなく、構造的な問題だよということを改めて我々自身も認識する必要があるなと思いますね。当初はみんな松本さんがいかに大物芸人かとか損害賠償額が大きいとか、ある種、スキャンダルのように見てしまっていましたけど、昨年からずっと芸能界、事務所、テレビ局、いろいろなメディアとかエンタメ産業全体がいろいろな問題を問われている。
そのなかで人権デューデリジェンス(人権で問題があった企業と取り引きしてはいけないという考え方)が強調されてきましたけれども、やっぱりそこと照らし合わせてみると、吉本興業としての対応を考えなくちゃいけないのではということをみんなが気づき始めている」
芸能界特有の「構造」の問題があったのではないかと言われる松本人志氏の疑惑。旧ジャニーズ事務所と同じような構図がなかったか、テレビも注目している。
昨年、ジャニーズ性加害問題で「マスメディアの沈黙」は厳しく批判された。テレビの制作現場で大手芸能事務所や芸能界との間に距離を置いて批判的に見ようという意識の変化が芽生え始めているものの、冒頭で述べたように、今回は各テレビ局が独自に取材して放送するところまでは至っていない。今後、各局がどのような姿勢を見せるのか、注視したい。