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 もちろん細部に関しては違います、知っていたはずもないです。つまらなかったという意味でもないです。そういうことではなく、この解散ノートを公開するという事実、私的なメモをファン一人一人と共有しようとしたことこそがモモコグミカンパニーらしさに包まれているような気がして、ならばその中身はどんな内容なのか、足りないかもしれませんがこれまでステージや雑誌、テレビ、小説やエッセイで知ってきたモモコさんから予想すると、この本の中身にとても納得がいくのです。

 一生懸命でどこか影があって、ちょっと不器用でちょっと(だいぶ?)ひねくれていて、自分自身を含めた人と人について考え続けている愛すべきモモコさんが解散ノートの中にはおられました。想像が立体化しました。

 特にモモコさんがとある日のリハーサルで口にする、

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『そんなこと言われても、困るよ。それぞれ違う考え方があるわけだし』

 という言葉、そして発せられた場面には、イメージするモモコグミカンパニー像が詰まっていました。

 

一つの青春の区切りとして

 お仕事をご一緒した立場で印象に残った部分をあげるとするなら、モモコさんがBiSHをアイドルだと表現するか否かの問題に触れていることです。仕事上での話になってしまうのですが、これまで僕のような外部の人間でも雑誌などでBiSHの名前を出す時には、アイドルという言葉の扱いに気をつけるよう言われていました。モモコさんが自身の作品でそこに触れている部分を読んで、本当にBiSHを離れた存在になられたんだなと一番強く実感したかもしれません。

 そういった点でも、自分にとってこの解散ノートを読む意味は、一つの青春の区切りなのだと思います。生きていて、小説家として活動していて、BiSHがいたあの頃に感じた、ライブの楽しさと次のアクションに期待する熱量と支えられる感覚と同時代を生きるものとしての嫉妬、全部があの頃確かにあったことを思い出にして、BiSHがいなくても一歩を踏み出そうと思えるような一冊だと感じています。ひょっとするとモモコさんにとってもそうなのではないかと勝手な想像をしています。