「文藝春秋 電子版」は3月8日(金) 19時より、批評家・作家の東浩紀さんと、元共産党員でジャーナリストの松竹伸幸さんによるオンライン番組「訂正できない共産党」を生配信します。

 

かつては「訂正」できていた

 昨年、共産党政策委員会で安保外交部長も務めた松竹伸幸さんの『シン・日本共産党宣言』(文春新書)が刊行されました。同書で党員投票による党首選挙の実施を共産党本部に求めた松竹さんは、刊行からわずか17日後に日本共産党からの除名を言い渡されます。

 東さんは昨年『訂正する力』(朝日新書)を上梓しましたが、その中で松竹さんの除名処分について以下のように触れています。

「共産党における訂正する力の欠如は、最近の除名問題でもあきらかです。古参党員でジャーナリストの松竹伸幸さんが、2023年のはじめに『シン・日本共産党宣言』という本で党首公選制を訴えた。そうしたらたちまち除名されてしまった。党の綱領すら『訂正』できない」

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 今年1月の共産党大会では、志位和夫委員長に代わって田村智子氏が新委員長に選出され、“初の女性党首の誕生”として話題になりましたが、「訂正できない共産党」という組織の体質に変化はないようです。

 この党大会で、松竹氏の除名に関して、「除名は対話の拒否にほかならない」と批判した神奈川県議団長の大山奈々子氏の発言を、以下のように徹底的に糾弾したのは、他でもない“共産党初の女性党首”の田村智子氏だったからです。

「党大会での発言は一般的に自由であり、自由な発言を保証している。しかし、この発言者の発言内容は極めて重大だ」

「発言者は『問題は出版したことより除名処分ではないか』と発言しながら、除名処分のどこが問題なのかを何も示していない。(略)発言者が述べたのは、ただ、『党外の人がこう言っている』ということだけだ。党外の人が言っていることのみをもって処分が問題と断じるのは、あまりにも党員としての主体性を欠き、誠実さを欠く発言だと言わなければならない」

「発言者は『除名というのは対話の拒否だ』と述べ、包摂の論理を尊重することは政党運営にも求められていると述べた。しかし、対話を拒否したのは誰か。党を除名された元党員は、自分の意見を一度として党の正規の会議で述べたことはなく、一度として正規のルールにのっとって党に意見を提出したこともない。党内での一切の対話の努力をしないまま、党外からいきなり党攻撃を開始したというのが事実だ」

「党外から出版という形で党の綱領と規約を攻撃した者を除名処分にしたことは当然だ。問題のこの政治的本質を全く理解していないことに発言者の大きな問題があると言わなければなりません(拍手)」

「私が最初に体験した共産党では、自由な議論が許されていました。ある学者からは『松竹さんのお陰で共産党が自由に見えていい』と言ってもらいましたが、そんな『異論を許す共産党』を復活させたいと思っていたのに……」と、松竹さんによれば、かつての日本共産党は「訂正する力」が十分にあったといいます。

 なぜ共産党はその力を失ってしまったのか。共産党はなぜ「訂正」できないのか、さらには共産党に限らず組織が「訂正する力」をもつことの重要性について、お二人の徹底的な議論をお楽しみください。

◆番組概要

 番組名:訂正できない共産党
 出演 :東浩紀、松竹伸幸
 日時 :3月8日(金)19時〜20時30分 完全オンライン番組です
 ※視聴するには「文藝春秋 電子版」の有料会員になる必要があります。
 詳しくはこちらをご覧ください https://bunshun.jp/bungeishunju/info/subscribe

◆東 浩紀(あずま・ひろき) プロフィール

1971年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家デビュー、早稲田大学教授など歴任。2010年に株式会社ゲンロンを創業、現在同社取締役。近刊に『訂正可能性の哲学』『訂正する力』『日本の歪み』(養老孟司、茂木健一郎との共著)がある。

◆松竹 伸幸(まつたけ・のぶゆき) プロフィール

1955年、長崎県生まれ。一橋大学社会学部卒業。ジャーナリスト・編集者。かもがわ出版編集主幹、日本平和学会会員、「自衛隊を活かす会」(代表・柳澤協二)事務局長。専門は外交・安全保障。著書に『憲法九条の軍事戦略』(13年、平凡社新書)、『集団的自衛権の深層』(同上)、『これならわかる日本の領土紛争』(11年、大月書店)、『幻想の抑止力』(10年、かもがわ出版)ほか多数。