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親子で「鬼平」を演じた松本幸四郎、市川染五郎。時代劇だからこその「人間らしさ」を感じてほしい。

親子で「鬼平」を演じた松本幸四郎、市川染五郎。時代劇だからこその「人間らしさ」を感じてほしい。

『鬼平犯科帳』(文春文庫)が新キャストで蘇る。

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 生誕100周年を迎えた池波正太郎さんの代表作『鬼平犯科帳』が新キャストで蘇ります。劇場版「鬼平犯科帳 血闘」(5月10日公開)において、親子で鬼平を演じる松本幸四郎、市川染五郎に連続インタビュー。二人に時代劇、エンターテイメントへの思いを聞いた。

 

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松本幸四郎
「池波作品のヒーローを全力で体現することに徹しました」

 祖父・松本白鸚、丹波哲郎さん、(萬屋)錦之介のおじさん、叔父・中村吉右衛門が演じてきた鬼平・長谷川平蔵を演じられることは、僕にとって、プレッシャーというより幸せです。叔父と同じ撮影所で演らせていただきましたが、使用した衣裳や小道具が綺麗に保存されていて、僕も使わせてもらいました。〈新たな鬼平〉を誕生させるのが使命ではあるけれど、何十年と鬼平にかかわっていらっしゃるスタッフの方々はじめ、ここまでの積み重ねがあるからこそ今の時代の鬼平犯科帳を生み出せる。池波先生の原作、大森寿美男さんの脚本と山下(智彦)監督の世界を体現することに徹しました。『血闘』で「人並みって、人じゃねえか、お前も俺も、このおやじも……な」という有名な台詞を平蔵が口にしますが、説教じみてはいけない、平蔵自身が生きてきて強く感じていることが、己れを卑下する人々に対する言葉になった、という気持ちで大事に演じました。

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 江戸時代は、人が人と会わないと、何も生まれない時代です。情報を得るにも、困った時も、喜んで騒ぎたい時も、人が人の所に行かなきゃ出来ない。生きていくには人とつながるしかなかった、人間らしさというものを感じてもらえることが、僕は、時代劇の良さだと思います。『血闘』では、登場人物が後ろ向いたり下を向いたりしていても、そこに必ず誰かがいる。息子と共演して刺激を受けたこと? 若いっていいな、という(笑)。あと、意外と殺陣がよかった(笑)。