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“刺さる”恋愛観が必ずある

 それは、藤代と同じように恋愛に悩み、苦しんだ人の口から語られる。例えば、人間は憎んでいる人よりもそばにいて愛してくれる人を容赦なく傷つける、とどこか悲しそうに呟く飲み友達。わかり合えなくても、その人と一緒にいたいと思って気持ちを知りたいと思えるのが恋なんじゃない? と言う大学時代の先輩。

 自分と全く同じ境遇の登場人物はいなくても、各々が恋愛に抱く割り切れなさ、それでもなお恋愛がもたらす奇跡やその時の感情を信じたいと思う心……どこかに必ず、自分と重なるような“恋愛の解釈”が本作には詰まっている。

 

 藤代が今もなお、囚われているハルとの恋。そして、現在進行形で歩んでいる弥生との恋。この2つの恋愛が最終的に行き着く先を見た時、恋愛が持つ割り切れなさも含めて全てを愛したいという決意と、温かな充足感で満たされる。

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 もう少しで4月。出会いと別れの季節であると同時に、どこか切ない昔の恋を思い出しがちな時期だ。でも、『四月になれば彼女は』を読んだ後は、そんな切ない恋の思い出があなたの背中を押してくれるかもしれない。