恋愛の終着点はどこだろう? 明確な答えがわからないまま、気づけばポイントカードのスタンプを押すように、私たちは交際、同棲、結婚へと駒を進めている気がする。『四月になれば彼女は』(原作:川村元気/漫画:箸井地図)は、そんな誰しも心の奥底にうっすらと抱いている“恋愛”の割り切れなさを真っ直ぐと見つめ、最後には優しく私たちを導いてくれる。

映画とは違ったコミカライズ

 本作は、川村元気氏による同名の原作小説を漫画化したもので、2024年3月22日(金)には佐藤健を主演に迎え実写映画が公開されている。原作小説を大きく改変した映画とは違い、本作では原作に沿ったストーリーが展開する。

 

 物語は、精神科医の藤代のもとに大学時代の恋人・ハルから一通の手紙が届くところから始まる。藤代は、1年後に結婚を控えている婚約者・弥生と同棲中だが、ハルから届く写真と手紙を眺めているうちに、当時の恋の記憶が蘇っていく。

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 ハルと初めて会った日のこと。写真部で一緒に活動をしていた時のこと、恋心を自覚した時のこと、一緒に花火を見て想いが通じた瞬間……。

 古いアルバムをめくるかのようにゆっくりと、鮮やかに蘇る当時の淡い恋の記憶。だけど、それと同時になぜあの恋を繋ぎ止めることができなかったのか? と、恋愛のままならなさが心に浮かび上がっていく。答えが出ないままいつも通りの日々を過ごす藤代だったが、そんなある日、突如婚約者の弥生が姿を消す。

 

 なぜハルは今になって手紙を送ってきたのか? 弥生はどうして姿を消したのか? 藤代は、職場の同僚や友人、弥生の妹、昔の記憶を頼りに、手探りで二人の彼女を追い求めていくが、その過程でぼんやりとしていた恋愛の輪郭がはっきりとしていく。