深夜の路地で「道路に足のようなものが転がっている」と通報が入った。現場で見つかったのは、激しい暴行を受けた48歳のシングルマザーの遺体だった。
自宅まであとわずか2メートルの場所だった。恨まれるような人物ではなかったという彼女は、なぜ残虐な犯行の標的となったのか。平成14年の事件の発端を追う。なおプライバシー保護のため、登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/続きを読む)
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「道路に足のようなものが転がっていました…」
その事件は「怪談」のような始まり方だった。事件現場の近所に住む女性が深夜に車で帰宅途中、ヘッドライトに照らされた女性の足のようなものを見た。
「キャーッ!」
路地から市道に白い足だけが投げ出され、上半身はよく見えない。女性は恐怖のあまり、車から降りて確認する勇気が持てず、来た道をバックして戻り、自宅に帰った後、110番通報した。
「見間違えかもしれませんが、道路に足のようなものが転がっていました……」
警察が現場に駆け付けたところ、右足の靴下以外は全裸の女性が死んでいるのが見つかった。近くには衣類などが散乱していたが、財布や携帯電話は見つからなかった。
その後、捜査を進めるほどに奇妙なことが分かった。まず、現場の目の前が被害者の自宅だったことだ。
被害者は焼肉店パート従業員の青木怜子さん(当時48)と分かった。12年前に離婚後、女手一つで3人の子どもを育てていた。
すでに成人していた怜子さんの長男は、警察の聞き込み捜査で事件を知ったという有様で、事情聴取に対し、次のように話した。

