「ザックはミュージカル出身だし、ジェレミーも過去にダンスをやっていた。レスリングのシーンはコレオグラフィーをこなすようなものでもあるから、そういった下地はプラスになる。それに僕が『やりたいか』と聞いたら、彼らは『やる』と言ったんだよ。誰もが自分に役が務まると信じていた。無理だと思ったら引き受けないだろう。
さらに僕たちには、元レスラーのチャボ・ゲレロ・ジュニアが、コーチ兼ファイトコーディネーターとしてついてくれていた。メインの俳優たちは、みんな彼から指導を受けている」
とは言え試合の描写は、役者にとってもダーキンにとっても、最も難しいシーンとなった。ダーキンは試合を最初から最後まで長いテイクで撮影し、役者はそれを複数回やらなければならなかったのだ。
「試合のシーンを良いものにすることは大事だったが、僕らに与えられた撮影期間はあまりない。だから、どの動きも無駄にできなかった。今回、一番苦労したのはそこだったよ。だがその分、見返りも大きかった」
最初から映画を応援してくれた次男ケビン
エフロンが実在のケビン・フォン・エリックに会ったのは、映画が完成してから。本人があまり映画にかかわらないようにしたのは、ダーキンが意図したことだ。
「僕はあくまでファンのひとりとしてケビンに会いに行った。その時までに脚本は書き終えていたよ。ケビンや彼の家族とあまりお近づきになるのは避けたかった。彼らと個人的に親しくなることが、映画を作る上で必要な決断に影響を与えてはならないからね。でも僕は、どんな映画にしたいのかをケビンにたっぷり説明した。それには、完成作を見る前に心の準備をしてもらう意味もあった。
嬉しいことに彼は映画を気に入ってくれた。ケビンは最初からこの作品を応援してくれていた。すばらしい人だよ。『何が起きても闘い続けなければならない』と彼は言う。とてもポジティブで、愛情にあふれる人だ。だから彼はひとりだけ生き延びられたのだろうと思う。きっと、愛が彼を引っ張ってくれたんだ」