1ページ目から読む
3/3ページ目

―― 元気の素ですよね。先ほど脳トレもすごくやっているっておっしゃってましたけれども、私たちが本当に驚かされることのひとつは、この会話のこのテンポ感なんです。

哲代 そうですか。はい、お口チャック、チャック。

―― チャックできないんだから言わなくても大丈夫(笑)。 でも、取材のときは、こういう答えが返ってくるかなってイメージしながら色々質問をぶつけているんですけれども、いつも想定を超える言葉で返ってくるのと、スピードも早いんで、 毎回ふたりがかりでお話を聞きに行っているんです。

ADVERTISEMENT

哲代 恥ずかしい限りです。 穴があったら入りたいでございますな。

できることもまだまだある

―― 103歳になってからは入院を3回しましたよね。

哲代 やっぱりね、年は争えませんな。

―― 3回入院したことで、それまでのように畑に通って大根を抜いたりするのが、ちょっと難しくなっちゃいましたね。

哲代 したいですがね。

―― したいという気持ちはもう全く枯れてないし、いつも「リハビリするんだ」っておっしゃってますもんね。歩行が難しくなってきても、今まで通りの暮らしをしたいという気持ちは、いつもひしひしと伝わってきます。でも、無理はしたらいけないから。哲代さんが現役で、長―く生きてくださることが私たちの願いなので。

哲代 そうでございますか。そう言っていただけて嬉しいです。

―― できなくなることが増えてきても、哲代さんは落ち込むことが全くないように見えるんですが、元気がなくなっちゃうこともありますか。

哲代 あります、あります。

―― でも、できないことが増えてきても、「できることもまだまだあるよ」っておっしゃるじゃないですか。できなくなってきたっていう変化を、哲代さんはやっぱりすごく冷静に、穏やかに受け止めておられていて。そこが、私たちもすごく勉強させていただいてるところなんですよ。

哲代 そんなにおだてちゃっても何もでませんから。そうですか。恥ずかしいばっかりです。

石井哲代(いしい・てつよ)

1920年、広島県の府中市上下町生まれ。20歳で小学校教員になり、56歳で退職してからは畑仕事が生きがいに。近所の人からはいまも「先生」と呼ばれている。26歳で同じく教員の良英さんと結婚。子どもはおらず、2003年に夫が亡くなってからは親戚や近所の人に支えられながら一人暮らしをしている。100歳を超えても元気な姿が「中国新聞」やテレビなどで紹介されて話題になり、2023年1月に刊行した初めての著書『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』がベストセラーに。

 

木ノ元陽子(きのもと・ようこ)

1970年、大阪府堺市生まれ。中国新聞社編集局次長。

 

鈴中直美(すずなか・なおみ)

1973年、広島県東広島市生まれ。中国新聞社報道センターくらしデスク。