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段取りを書いておくのは頭の整理に必要なことだし、間違いやすい固有名詞やつい忘れがちなことは、メモをして見える所に置いておいた方がいい。が、問題は書き方で、あまりちゃんと書いてしまうと、メモにある言葉を順に読んでいくトークになってしまう。

いつも、(内容はいいんだけど、どうも生き生きしたトークにならないなあ)と思っていた私は、ある時トークの直前に春日さんの手元にあるメモを取り上げ、捨ててみたことがあります。春日さんは慌てました。でも生放送。喋らなければなりません。春日さんはアワアワして、メモを思い出しながら、話は前後に飛びつつも、生き生きとした面白いトークになりました。

目の前の若林さんも面白がっていました。もちろんそれは、春日さんのあのキャラクターがあってのこと。ラジオの深夜放送だからできたことでもあります。そして、一回だけのことです。自分でメモを作る場合は、あえてキチンとした文章にしないことを心掛けた方がいいでしょう。

藤井 青銅(ふじい・せいどう)
放送作家
1955年生まれ。山口県出身。第一回「星新一ショートショートコンテスト」入賞。以来、作家・脚本家・作詞家・放送作家の活動を開始。ライトノベルの源流とも呼ばれる『オールナイトニッポン』をはじめ多くのラジオ・テレビ番組の台本や構成も手がける。著作に『一千一ギガ物語』(猿江商會)、『「日本の伝統」の正体』、『ハリウッド・リメイク桃太郎』(いずれも柏書房)、『幸せな裏方』(新曜社)、『ラジオにもほどがある』(小学館文庫)、『ゆるパイ図鑑』(扶桑社)、『トークの教室 「面白いトーク」はどのように生まれるのか』(河出新書)などがある。