日米共同統合指揮所演習「キーン・エッジ」が今年2月、自衛隊や在日米軍などの施設で行われた。今回は初めて豪州軍も参加した。複数の関係者によれば、今回は台湾有事をテーマに演習が行われた。米軍が台湾有事で支援活動を行う際、自衛隊は在日米軍基地を含む日本の防衛、シーレーンの維持などに回る。豪州は北部ダーウィンなどに兵站基地を設け、グアムや沖縄などへの補給支援活動の拠点としての役割を担う。同時に豪州軍のコリンズ級潜水艦が南シナ海などに展開し、中国軍が太平洋に進出して米軍や自衛隊の背後を突かないよう警戒するのだという。
米国が抱える課題とは
2027年に向け、遮二無二準備に走る米国だが、簡単ではない問題も残されている。一つは、米国と米軍があまりに性急に動くため、関係国の足がもつれがちになるという問題だ。自衛隊の別の幹部は「米軍は南西諸島での訓練をやりたがっている。しかし、自衛隊ですら訓練がままならないのに、応じられるわけがない」と語る。
木原稔防衛相は11日、南西諸島の防衛力強化の一環として沖縄県うるま市に陸上自衛隊の訓練場を整備する計画を断念すると発表した。木原氏は「住民生活と調和しながら、訓練の所要等を十分に満たすことは不可能と判断した。地元の皆様におわびを申し上げる」と述べ、地元の理解を得られなかったことを明らかにした。「2027年を目標とした時代精神」は岸田首相や自衛隊には共有されているかもしれないが、沖縄県民はもちろん、日本の国民一般に浸透しているとは言いがたいだろう。
また、別の安全保障専門家は「防衛には相手がいることを忘れてはいけない」と語る。自然災害に対する備えをしても、台風や地震が怒ったりはしない。しかし、日米などの動きが中国やロシアを刺激していることも事実だ。
中国・ロシアの不満
中国外務省は今回の日米首脳会談について「強烈な不満と断固たる反対」を表明した。ロシアも外交ルートを通じ、日本に「日米の軍事協力の発展は北東アジアの安定と安全保障に脅威をもたらす」と伝えた。中国やロシアの指摘をうのみにする必要はないが、日米で安全保障協力を強化しても、中ロが反発してそれ以上の強化をすれば、努力の意味がなくなる。
バイデン政権は「中国との競争」を掲げる一方、「対立は望まない」と繰り返し表明している。2027年に向けた準備も、「万が一の事態にも、きちんと責任を果たす」という考えから出ているのだろう。そうであれば、なおさら、日本の内外で神経の行き届いた落ち着いた対応が求められる。岸田首相もまさか、個人の栄達のためだけに米国を訪れたわけではないだろう。日本の国土と日本の市民のために、決死の覚悟で臨んでもらいたいものだ。