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「自分が主演できるわけがないと思った」最新作『ハピネス』

――映画『ハピネス』は初の主演作ですが、初めは「自分の実力では主演は担えない」と後ろ向きな気持ちだったそうですね。

窪塚 お話をいただいたとき、蒔田彩珠さんをはじめ、そうそうたる出演者のなかで、自分が主演できるわけがないと思いました。そんな方々を引っ張る俳優にはまだまだなれていないし、もちろん嬉しさもありましたが、それ以上にできないという気持ちのほうが大きくて。弱音ばかりが出てきました。

 でもそういう気持ちをいったん脇に置いて、脚本を読んでみたら、涙がぼろぼろとこぼれてきたんです。なんてすばらしい作品だろうって。そのときは感情をうまく言葉に落とし込めませんでしたが、とにかくこの作品に出演しないのはもったいない。弱音は撮影が終わってから吐こうと思って、気合いを入れて作品に臨むことにしました。

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©杉山拓也/文藝春秋

――完成した作品のなかの自分を観て、どう思いましたか?

窪塚 本気で役と向き合って、役作りをした作品でもあったので、その分悔しさもありました。もっと違う演じ方ができたんじゃないかって。

 でもエンドロールが流れてきて、自分の名前を観たときに、なんかこう動けなくなってしまいました。悔しさもたしかにあるけど、がんばったなって。自分の想いが詰まった作品で、自分の俳優人生にとってかけがえのない作品になったなと、あらためて身に沁みました。悔しさ半分、嬉しさ半分という感じです。

©杉山拓也/文藝春秋

20代になる前にこの作品に巡り会えてよかった

――窪塚さん扮する雪夫は、蒔田さん扮する恋人の由茉から、余命1週間だと突然告げられます。彼女のために全力で行動する雪夫の必死さが、最初から最後まで剥き出しになって伝わってきました。

窪塚 たぶん僕自身も雪夫と同じ境地に立たされていたような気がします。撮影中はとにかく必死で、追い詰められていて。夜も寝付けないときがありました。

 蒔田さんとは、カメラの前以外ではほとんど話をしていなくて、普段の蒔田さんを知らなかったからこそ、雪夫と由茉の関係を映画のなかに築けたのかもしれません。それまでとは違う作品への臨み方をしたので、それも雪夫の必死さや余裕のなさにつながったのかもしれません。

 この映画の世界観は雪夫として感じていたよりもあたたかい感じになっていて、観たときに悲しい気持ちにはならなかったです。それがなんとも言えない感覚でした。撮影はまだ10代のときでしたが、20代になる前にこの作品に巡り会えてよかったです。あらためて俳優人生が始まったのかな、と思います。