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芝居は自分が思っていた深さより、もっともっと深かった。

――それでようやくスイッチが切り替わったんですね。

窪塚 クラスメイトが背中を押してくれた、と勝手に思っています。

――そこから演技のレッスンを受けはじめたんですか?

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窪塚 レッスンやワークショップに参加する機会はもちろんありましたが、最初は何もわからなくて、現場でも戸惑いました。なめていたわけではありませんが、自分が思っていた深さより、もっともっと深かった。いきなり現場に立って、到底できるものではありませんでした。

 当時は、芝居に関してわからないことがあったら父親に相談することもありました。

©杉山拓也/文藝春秋

――これまでにどういうことを聞いたり、言われたりしましたか?

窪塚 最初に言われたのは、ドラマに初めて出演させていただいた『ネメシス』のときです。悲しい場面で、悲しさを表現しようと下を向いていたら、せっかくカメラが向いているのにもったいないぞって。ちゃんと顔を上げて表現するようにしなさいと言われました。

 その教えはずっと守っています。あと、楽をしないということです。たとえばポケットに手を入れると、それだけで落ち着いてしまう。だからできるだけ外に手を出して芝居をするようにしています。ほかの俳優さんたちからも、若いうちは芝居で楽をしないほうがいいと言われました。

©杉山拓也/文藝春秋

――いまはもう現場で戸惑うこともなく?

窪塚 自分が思う芝居に少し近づけるようにはなってきました。とくに最近は“生”の芝居を追求したいなと思っています。

 ずっと履き違えていたのですが、生の芝居とナチュラルな芝居は違うんです。普段の自分通りに芝居をしても、生を表現することはできない。人と人が本気でぶつかり合った瞬間に生まれる間というものが、自分が思う生なんです。

 お互いに本気でやって、ぶつかり合って、どこに着地するかわからない、そういう生の瞬間を大切にしていきたいと思います。それが観る人の心をつかむのかなって。