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「しっかりしなきゃ、泣いてられない」と前を向く

 手術は無事成功し、1週間程度の入院のあとに治療終了を告げられて退院。

 思えば乳がん検査から、手術、入院、そして退院まで、順調に流れていったのは、空の上から竜ちゃんが見守ってくれたからなのでしょう。

上島竜兵さん Ⓒ文藝春秋

 手を合わせ心の中で「心配かけてごめんね」と、私の方から謝りました……。

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 母には、病院で検査をすることが決まったときに、「実は、しこりが気になるから東京の病院で検査してくるね」とやっと伝えることができました。

 77歳と高齢になった母に心配をかけることがわかっていたのでなかなか言い出せませんでした。案の定、動揺を隠せない母は、

「竜ちゃんが亡くなって、今度は、ヒーチャンががんになったらもう、お母さん耐えられない」と泣き出してしまいました。

 辛い思いばかりさせて本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、「お母さん、どちらも当事者は私なんだよ」と言う私の言葉を聞くと「ハッ」としたよ

 うに、昔のしっかり者の優しいお母さんに戻らなきゃと思っている感じが伝わってきました。

 娘が不憫だと泣く母を見て、やっぱり、私は、「泣いてなんかいられない」、早く治療をしてもらって日常に戻らないといけないのだと強く思いました。

 竜ちゃんが、もし、私が乳がんだということを知ったらなんて言うだろう。

 実は、2020年の秋に私は、人生で初めての入院手術をすることになりました。

 詳しい病名は避けますが、それは、ポリープ除去手術でした。

 入院は、数日でしたが、舞台公演中だったので、竜ちゃんは、面会時間に間に合いませんでした。

 ロビーまで病衣で出て行った私が、ガラス越しに、外にいる竜ちゃんとスマートフォンで会話をしていたら、竜ちゃんの顔がみるみるうちにくしゃくしゃになって、しくしくと泣き出してしまったのです。

 なんだか韓流ドラマにこんな場面ありそうだなと思ったら、竜ちゃんが愛おしく、大げさだなと、可笑しくて思わず笑ってしまいました。

 その後、病理検査の結果は良性でしたが、いくらポリープだと言っても信じず、「ヒーチャンががんだぁ」と泣き崩れてしまったことがありました。

 今回は、本当にがんなのだから、竜ちゃんが知ったらやっぱり、ただただ、泣き崩れるのだろうなと思いました。

 そしてやっぱり、私はというと、「しっかりしなきゃ、泣いてられない」と前を向くのだと思います。

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