2023年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。女性芸能人部門の第2位は、こちら!(初公開日 2023年7月19日)。

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 いまから30年ほど前、1990年代初めにヘアヌード写真ブームというものがあり、有名女優があいついで写真集を出した。そのなかで杉本彩も1993年、ファッション写真家の川島文行の撮影によるヘアヌード写真集『ENFIN(アンフェン)』を刊行して注目される。

 杉本はそれまでにも、モデルや歌手として露出度の高い過激な衣装を何度となく披露してきた。それだけに、ヌードもその延長線上にあるのかと思われた。しかし、本人は『週刊文春』のグラビア登場時(1993年4月29日号)のインタビューでこれをきっぱりと否定したうえ、次のように語っている。

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杉本彩 ©文藝春秋

《私は、作品に求められる人物を演じただけなんです。作品の中で、裸というファッションをまとっているんです。『二十四歳[引用者注:撮影時の年齢]のすべてを見せます』というのとは違いますよ。別に、自分自身をすべて見せようとは思っていないから(笑)。写真集の私は、自信たっぷりに演じている。積極的な自分が表現できてるので満足です》

「エロスを哲学的に理解したい」

『ENFIN』はフランス・パリ郊外のシャトーを舞台として、川島のコンセプトのもと、衣装やメイクもパリで活躍するスタッフが集まった。杉本は一流アーティストの創る世界にいかに自分が溶け込むかを強く意識したという。

 最近になって、当時を振り返った杉本は、《表現者として、エロスを深く哲学的に理解したいという探究心は当時から旺盛でした。今も考え方は変わりませんが、残念ながら機会や意欲は激減しています(笑い)》と語った(『週刊ポスト』2021年2月5日号)。

 いまでは杉本彩といえば、動物愛護活動家としての顔のほうが広く世間で認知されているかもしれない。かつて30代半ば頃に「エロスの伝道師」と称されたイメージとはまるで違うが、彼女のなかではどこかでつながっているのだろうか。その杉本はきょう7月19日、55歳の誕生日を迎えた。

2008年には、動物愛護活動の一環でヌードを披露。手にしたプラカードには「Fur? I'd rather go naked」というメッセージが書かれている ©時事通信社

高校中退、モデルの道へ…体重10キロ減で変貌

 京都の祇園で生まれ育った杉本は、父親の借金や両親の離婚など複雑な事情を抱えていたこともあり、10代のころからお金を稼いで早く自立したいという気持ちが強かったという。中学時代に着物モデルのアルバイトを始めたのも、そんな思いからであった。

 高校には進んだものの、すぐに「モデルの勉強に専念する」と言って中退する。当時通っていたモデルのレッスン事務所の講師は、それを知ってあきれたが、その後、杉本は半年ほどかけて体重を10キロぐらい落とし、それまでのぽっちゃりとした体型から見事に変貌を遂げたので驚いたという。