初めて「もう死んでしまいたい」と思ったのは17歳の時だった。
それ以来ずっと私の「生」は天秤のようなもので、死にたい理由と死なない理由を両サイドに載せた天秤の針が、死なない、の方に振れ続けているから今も生きている。ふとしたことでその針は揺れ動いてしまうから、気をつけて生きていくしかない。
人間が生き続けるために、天秤の針を逆に向けないために必要なものは何だろうか。
『おはよう、しっぽ』にはそれを探していく人たちが描かれていた。それぞれに苦しみや葛藤や呪いや傷を抱えた登場人物たちが、それらを抱えたまま生き続けるために必要な、大事なものを探していくお話だった。
その過程の中で、誰かのちょっとした言葉や態度に傷ついたり、誰かを傷つけてしまったり、思わぬことに救われたり励まされたりする。他者と向き合うことも自分自身と向き合うことも、どちらもひどく労力のいることで難しいこともたくさんあるけど、それでも向き合ってよかったと思わせてくれるエピソードが詰まっていた。
どのエピソードも素晴らしかったが、その中でも特に、深い自虐に陥っているムギさんが、それまで被害者だと思っていた自分がふとした瞬間に加害者になってしまうエピソードは涙なしには読めなかった。
数年前に深く尊敬し信頼している脚本家さんにこう言われたことを思い出す。