文春オンライン

失敗作であればあるほど会場が盛り上がる…冗談のつもりで始めた「ヘボコン」が世界で熱狂を生むまで

source : 提携メディア

genre : ライフ, ライフスタイル, 社会

note

「あなたも主役になれる」というメッセージ

その垣根を取り払ったのがヘボコンであった。ヘボコンは(私は全く意識していなかったが)こんなメッセージを発していた。「あなたもテクノロジーの主役になれる」「(くわしい人たちよりも)むしろあなたのテクノロジーが輝く場がある」。

要望を受けて、私は英訳したルールブックとイベント開催ガイドを配布し、ヘボコンは各地で地元の主催者により開催された。あっという間に世界に広がって、スペインのある州では教育カリキュラムに取り入れられ、中学生が全員ヘボコンに参加するのだという話も聞いた。2016年には世界大会も開催した。

この世界にかかった呪いを解きたい

繰り返すが、最初は全くの冗談のイベントだった。それがこうやって広がりを見せるうちに、もしかして社会的意義があるのでは……? と考えるようになった。

ADVERTISEMENT

そして今、私はヘボコンを通して「この世界にかかった呪いを解きたい」と考えている。皆の行動力を失わせ、新たなことに挑戦する足かせとなっている呪いを。その呪いとは「すぐれたものほど良い」という考えだ。

完成度の高いロボットは確かに素晴らしいが、完成度の低いロボットにも同じくらい良さがある。うまく動かないかわいらしさはそれだけで魅力である。ピクリとも動かないとしても、「ロボットなのに動かない」なんて、その存在だけでおもしろいじゃないか。しかもそれを作るのに何十時間もかけたなんて!

作者がかけた時間や労力と同じだけ、作品には魅力が詰まっているはずなのだ。でもそういった魅力が、「すぐれたものほど良い」という価値観によって覆い隠されてしまっている。それは日本だけではない。どうも世界中がそうであるようなのだ。

そうやって取りこぼされた、拙い作品の魅力を一つ一つ拾って、ステージで紹介し、またインターネットを通して世界に発信していく。それがヘボコンと私の使命だと思っている。そうすることで、この世界にかかった呪いを、すこしずつ薄めていければいい。

関連記事