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失敗作であればあるほど会場が盛り上がる…冗談のつもりで始めた「ヘボコン」が世界で熱狂を生むまで

source : 提携メディア

genre : ライフ, ライフスタイル, 社会

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「成功の母」でなくても失敗は魅力的

もうひとつ。「失敗は成功の母」という言葉がある。私はこの言葉もあまり好きではない。失敗を成功のための過程と捉えているからだ。

私の考えでは、失敗は単体で魅力的であり、豊かなものだ。成功に向かわない、単なる失敗もそれはそれで面白いのだ。

これはロボットに限らない。たとえば外国語だって、ペラペラ喋れたら強力なツールであることは確かだが、しかし学び始めの片言の段階で身振り手振りを交えてなんとか外国人とコミュニケーションをとるのも、それはそれで独特の楽しさがある。失敗や拙いものにも、完璧なものにはない独自の良さがあるのだ。その視点がヘボコンを生み出し、10年続ける原動力となった。

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今年のヘボコンは6月29日に10周年大会を開催する。今年もたくさんのヘボいロボットが集まる予定だ。ヘボいと一口で言ってもいろんなパターンがある。配線が間違っているとか部品が外れるとかいった機体の問題をはじめ、電池を逆にいれたり操作を誤ったりという出場者の問題、そしてロボットを電車に置き忘れたり、飛行機の荷物検査で没収されてしまうといったハプニングもあった。

そろそろ全部のパターンが出尽くしたかな……と思うが、開催してみると毎年新しいものが出てくる。ヘボの可能性は無限大なのだ。

今年はどんな新しいヘボが出てくるか、本当に楽しみだ。

石川 大樹(いしかわ・だいじゅ)
編集者/ライター
1980年生まれ。岐阜県出身。大阪大学人間科学部卒。フリーランスの編集者・ライター、電子工作作家。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。第18回文化庁メディア芸術祭 エンタテインメント部門 審査委員会推薦作品 入選。趣味はワールドミュージックの収集。共著に『雑に作る 電子工作で好きなものを作る近道集』(オライリー・ジャパン)がある。
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