少しやつれただろうか。髪は伸びてボサボサ、頬がこけたというより緩んで下がってきたのか、その顔に緊張感は感じられなかった。
3月に事件が発覚して以来、カメラの前に初めて姿を見せたのは、ドジャース・大谷翔平選手の元通訳、水原一平(39)被告。黒いスーツの中に白いシャツを着て、遠くを見るような目と表情のない顔は、メディアの質問に反応しないように感覚を麻痺させているような印象だった。
違法賭博の借金返済のため、大谷の通訳という立場を利用し、彼の銀行口座から金を盗んで不正送金したとして、銀行詐欺などの罪で起訴されている水原被告。
5月14日に、罪状認否のためにロサンゼルス連邦地裁に出廷した。待ち構えていた60人ほどのメディアは、なんとか反応を引き出そうと次々と質問を浴びせかけるが、水原被告は終始無表情で無言を貫いた。
ネットやニュースなどで確認できる映像は、現地にいる記者たちによって撮られたものだ。メディアによって撮影位置も違えば、アングルも異なる。ほぼ全ての映像を見ると、無表情を貫こうとする中でも、水原被告がわずかに反応を見せた質問が目に留まった。
連邦地裁前で車を降りた水原被告はまず、居並ぶ記者たちにちらりと視線を送る。しかしメディアが待ち構えていることは予想していたようで、表情ひとつ変えることなく弁護人とともに建物へと歩き始めた。
「イッペイ、本を書くつもりはありますか?」に強く反応
記者たちは当然マイクを突き出しながら追いかけたが、弁護人が「今日はコメントしません」と告げる。本人の意思だったのか弁護人の指示だったのかはわからないが、1つの質問に答えてしまえば矢継ぎ早に畳みかけられることは目に見えていた。それを回避するための無言だろうが、怪訝な表情すら見せない徹底した態度だった。
建物の入口で3分ほど待たされた時も、周囲をぐるりと記者たちに取り囲まれた水原被告。
「翔平は本当に何も知らなかったのですか」という質問には、顔を上げ視線を遠くに飛ばす。
「ドジャースに対して」「大谷選手と連絡は取ったのか」と聞かれても何も反応しない。「大谷選手に今、何か言いたいことがありますか」と聞かれると、唇を噛んだようにも見えた。