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 そんな水原被告が顕著な反応を見せたのは、英語で「イッペイ、本を書くつもりはありますか?」と聞かれた時だった。

 水原被告は発言こそしなかったものの、左手で顎先を撫でるように触った。

『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』(河出書房新社)の著者として有名なジョー・ナヴァロ氏は、人がこの仕草をするのは何かを評価している・深く考えているときだと述べている。だとすれば、水原被告は“本”の執筆を考えているのかもしれない。

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終始無表情で、遠くを見るような表情がほとんど動かなかった ©時事通信社

 続けて記者は「みんな何が起きたのか知りたがっています」と問うた。すると彼は本当にかすかだが、何度か首を縦に、頷くような仕草を見せたのだ。

 裁判所の入口ではセキュリティーのために靴を脱いで預け、ベルトを外し、上着を脱いでゲートを通る必要がある。水原被告がゲートを通る時、シャツの裾はズボンから出たままだった。以前なら自らの立場と人の目を気にしてすぐさま身だしなみを整えただろうが、今は自分のことには無頓着になっている印象が強い。

「コメントはないんですか? 大谷選手に」という言葉にも反応

 裁判所での罪状認否自体は5分で終了した。

 すでに司法取引に応じて罪を認めているが、この日は形式上、無罪を主張。退廷すると再び記者たちの前に姿を現したが、やはりその問いかけに応じることはなかった。

 ただ一度、「コメントはないんですか? 大谷選手に」と問いかけられたとき、わずかに眉根を寄せ、さらに「大谷選手に謝罪したいというコメントを出されていましたが」と聞かれると、下唇をまき込んで噛むような仕草を見せたのだ。

かつては教科書にも取り上げられていたが… ©時事通信

 唇を噛むのは、ストレスを感じた時に自分の感情や気持ちをなだめるための行動だといわれている。すべての質問に対して、水原被告がどのように反応したのか確認する術はない。だがメディアに無言を貫いても、内面では大谷選手に対する何らかの感情が揺さぶられたのだろう。

 次回の裁判は6月14日の予定、水原被告は正式に有罪答弁を行う見通しだという。捜査に対しては罪を認めているが、無言を貫いている。彼が自分の言葉で説明をする日は来るのだろうか。