世界最高峰のボディビル大会「ミスター・オリンピア」に日本人で初めて出場した伝説のボディビルダー・山岸秀匡さん(51)。現在はジムの経営などを行いながら、ボディビル界の発展に貢献している。
2007年12月、ステロイドを持ってアメリカに入国しようとした山岸さんは、ロサンゼルス空港で逮捕され、約70日間も現地の刑務所で過ごすことになる。いったいなぜ、彼は逮捕されてしまったのか。アメリカの刑務所で、どんな生活を送っていたのか。話を聞いた。(全2回の2回目/最初から読む)
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2007年12月、ロサンゼルス空港で逮捕された経緯
――2007年、ロサンゼルス空港で逮捕されました。
山岸秀匡さん(以下、山岸) たんぱく質を同化して筋肉を作るアナボリックステロイドを持って入国しようとしたんです。その前年も、日本からアナボリックステロイドを持って行ってました。でも、誰も気にしていなかった。
――なぜ2007年のときは逮捕されてしまったのでしょうか。
山岸 アメリカで、ステロイドに対する規制が厳しくなっていたんです。昔は“野放し状態”で、道端でステロイドを使っている人もいたくらいだったのですが、ある時期からアメリカのスポーツ界でステロイドが蔓延し始めたので、捜査当局が規制を強化した。
だから、アメリカで正規のアナボリックステロイドが買えなくなってしまって。それで、日本から持って行ったところを摘発されてしまいました。
1年分使える量を持ち込んでいたので、「アメリカで販売するために持ち込んだんじゃないか」と疑われて。
――空港で逮捕されたあと、どうなったのですか。
山岸 空港から直接、ダウンタウンにあるカウンティジェイル(拘置所)に連れていかれました。当時は英語がまったく喋れなかったので、何が何だかわからなくて、とにかく恐ろしかったですね。
カウンティジェイルに着いたら、手続きを進めるために入り口で待たされたのですが、12月の夜中だったので、めちゃくちゃ寒いんですよ。