「当時は、もう終わりだと思っていました」逮捕がもたらしたキャリアへの影響は?

――釈放されたのが2008年1月。合計で約70日ほど収監されていたのですよね。

山岸 そうです。いま考えるとそんなに長い期間じゃないですけど、入ってるときは1日1日が長かったですね。釈放されたときは「やっと出られるのか」という感じでした。

――釈放後、日本に帰国されたそうですが、周りの人は心配していたのでは?

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山岸 自分は知らなかったのですが、ロサンゼルスで捕まったことが報道されていたみたいで。帰国して実家に戻ったとき、両親は心配していました。

 いろんな人に迷惑をかけてしまったけど、もしあのタイミングで捕まっていなかったら、もっと酷い目にあっていたかもしれない。逮捕されて収監されたことで、それまで慢心していた自分自身を悔い改めることができました。

――ご自身のキャリアへの影響は?

山岸 当時は、もう終わりだと思っていましたね。とにかくアメリカに帰れれば良いという感じで。

 実際にアメリカに入国できるようにしてくれた弁護士や、それをお膳立てしてくれた友人にはすごく感謝しています。最悪の状況に直面したけど、その中で最善の道を進むことができました。

 アメリカは、良くも悪くもセカンドチャンスに寛容な国なんです。おそらくそのまま日本にいたら、その後のキャリアを築くのは難しかったと思います。

「アーノルド・クラシック」で日本人初の優勝

――その後、マスターズを含めた「ミスター・オリンピア」には計11回出場。2016年には、アーノルド・シュワルツェネッガーが主催する大会「アーノルド・クラシック」で日本人初の優勝を果たします。

山岸 アーノルドで優勝できたのは、自分のキャリアでは間違いなくピークでしたね。前年に2位だったので、次は絶対勝てるというか、勝たなくちゃいけないと思って出場して。

 実際に勝ったときは、もちろんうれしかったけど、どちらかというとホッとしました。

 

――ステージ上ではシュワルツェネッガーとも話したんですか?

山岸 「おめでとう」と言ってくれました。あとは、当たり障りのない会話をして。

 実はベニスのゴールドジムで、ほぼ毎日のように会っていたんですよ。彼は毎日朝10時くらいに来てましたよ。今も来ているんじゃないかな。70歳を過ぎているのに、元気ですよね。

――どんな人なんですか、シュワルツェネッガー。

山岸 気さくですね。ジムにいる人も彼を有名人扱いしてないし。観光客は驚いてますけどね。