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叡敦さんはこうした動きに対してどんな思いだったのか。

「自分のやっていることが迷惑なのだろうかと、悩んでいます。加害者に長期間、SOSを出してきたがどうにもならず、天台宗に訴えれば、隠蔽され続けてきたことが解決に向かうのではと信じてきてやってきました。しかし、実際の聴取では加害者への“かたより”を感じます。閉じられた宗教界の中では、上下関係が厳しく、なかなかそれを覆すのは難しいと思います。しかし、宗教の中でこのような被害を受けている人のためにも、宗教を広めていくためにも、私はやめるわけにはいきません」

一連の内部からの批判的な声を踏まえ、佐藤弁護士はこう述べる。

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「大阿闍梨が超絶偉いことが、よくわかりました。なので、天台宗の内局の人が調査しても、正しい判断ができるのは難しいと思います。ぜひ、第三者委員会を立ち上げ、公正な判断をしてもらいたい。今後、民事訴訟に踏み切るかどうかについては、加害者2人の懲戒、擯斥(ひんせき)の有無をみて検討したい」

次々に明らかになる天台宗の醜聞。ある天台宗関係者は「A氏の破門は免れないだろうが、宗門が大阿闍梨をも追放するのは難しいと思う。しかし、それでは世間は許さないだろう。天台宗始まって以来のスキャンダルだ」と話した。

筆者は、仏教界の「権威主義」のすべてを否定するつもりはない。厳しい修行と徳を積み、尊敬を集める僧侶も少なくないからだ。しかし、その一方で、残念ながら、僧侶である前に「人として」問題を抱える僧侶がいることも確かだ。

天台宗には、速やかに自浄作用を働かせることが求められる。他方で理解者であるべき女性僧侶の中から、性被害者に対する冷ややかな声が上がっていることに、本件の「闇の深さ」を感じざるを得ないのも正直なところである。

鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり)
浄土宗僧侶/ジャーナリスト
1974年生まれ。成城大学卒業。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』(文春新書)近著に『仏教の大東亜戦争』(文春新書)、『お寺の日本地図 名刹古刹でめぐる47都道府県』(文春新書)。浄土宗正覚寺住職、大正大学招聘教授、佛教大学・東京農業大学非常勤講師、(一社)良いお寺研究会代表理事、(公財)全日本仏教会広報委員など。