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 いったい、今回の問題を報じた週刊新潮の記事の、どこが「セクハラという人権上の問題」を「興味本位に」扱っていると言うのだろうか。

 確かに、週刊誌が著名人の不倫などのスキャンダルを、「興味本位に」扱う傾向はある。関係者の人権への配慮が足りない、と感じる記事にもしばしば出会う。その一方で、新聞やテレビが切り込むことができずにいた様々な政治や社会の問題を、週刊誌が果敢に掘り起こしてきたのも事実だ。

オウム真理教の問題を粘り強く報じたのは週刊誌だった

 私が関わったオウム真理教の問題では、新聞やテレビがほとんど伝えない中、粘り強く報じたのは『週刊文春』や当時の『フォーカス』(新潮社)などの週刊誌媒体だった。ちなみに、週刊新潮の現在の編集長宮本太一氏は、同社の週刊誌でオウム問題を地道に取材してきた腕利きの記者であり編集者である。

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 その週刊新潮は、安倍首相と近しい男性ジャーナリストから性被害を受けた、という女性ジャーナリストの訴えを取り上げ、逮捕状まで出ていたのに、執行直前で警察の捜査が突如止まった経緯も詳細に報じた。それもあって、女性記者は同誌を情報提供先に選んだのではないか。

 政治家の問題などは、週刊誌の報道を新聞が後追いすることも多い。それをよそに、週刊誌=「人権上の問題を興味本位に扱う」イメージを識者コメントで強調し、今回の記事の評価を貶める手法はアンフェアだ。

女性社員がセクハラ被害を受けていたと明らかにしたテレ朝の記者会見 ©共同通信社

 読売新聞は19日付夕刊でも、週刊新潮への音声データ提供を批判的に報じた。記事には、TBSが坂本堤弁護士のインタビュー映像を放送前にオウム真理教幹部に見せたケースなど、他メディアの5つの事例を表にして、「取材情報を第三者に提供した過去の事例」として添付している。

同じように悪質なものだという印象を与えたいのか

 読売新聞は、自分たちが何を報じているのか分かっているのだろうか?

 今回は、自社では適切に対応してもらえなかったセクハラ被害者が、報道目的で報道機関に被害の証拠を提供したケースだ。

 他方、TBSのケースは、敵対する両者のうち、一方の取材情報を他方に提供したというもの。しかも見せた相手は、当時すでに『サンデー毎日』などで反社会的体質が指摘されていたオウム真理教だった。まさに言語道断の行為で、今回のセクハラ告発とは構図も目的も異なる。他の4事例も、警察の情報を捜査対象に教えたり、民事訴訟の原告の記者会見の音声データを被告側に渡したりといった、今回とはまったく関係がない事例ばかりだ。

 まったく無関係なものを並べ立てて、今回のケースも、それと同じように悪質なものだという印象を与えたいのだろうか? だとしたら、悪質な印象操作でしかない。